次に震為雷☳☳の卦象を下から追って物語を紡いでいく。
物語は下卦震からスタートする。下卦震の初爻がエネルギー源となってハプニングや騒動が起こる。下卦震の二爻と三爻の国民が吃驚して世間は騒然とする。やがて騒動は収まる(二三四の互体艮☶の止まる性質)が、三四五の互体坎☵の困難に世間は覆われて、騒動の余韻は続いて、人々は不安の中に置かれたままである。上卦震に移行すると、九四がエネルギー源となって再びパニックや騒動が起こる。不安の中に置かれたままの人々は理性を失い社会は騒然となり異常事態に突入する。しばらくすると騒動は収まって人々は理性を取り戻す。これまでの騒動を冷静に振り返ってみると、一時は終わらない不安の嵐だと感じていた事態が、実は大したことではなかったことに気が付く。
震為雷はパニックに対処する事業継承者としてのリーダーの道も説いている。経文(卦辞・彖辞)に「震、百里を驚かせども、匕(ひ)鬯(ちよう)を喪(うしな)はず。/雷が轟き渡るような大事変が勃発すると大衆は驚愕して自分を失うが、先祖と神仏をお祀りする祭主のリーダーは神前の料理を掬(すく)う匙(さじ)と香りのよいお酒を決して落とさない。すなわちリーダーは如何なる事変が勃発しても自分を失うことなく、泰然自若として事変を適切に処理する」とある。事業継承者としてのリーダーは最初は三爻の位置に居る。まだリーダーとしての資質を具えていないこの段階では「パニックの発生に茫然自失して途方に暮れる」。その後、三爻は後継者としての地位を得て四爻の位置に進む。この段階では「エネルギーが空回りして物事が滞る」。以上のような経験を積んで、事業継承者の地位(五爻)に就く。五爻は「泰然自若と対応して社会の秩序を守る」。
黒岩重人著「易を読むために 易学基礎講座」藤原書店では、四九澤火革から五十火風鼎を経て五一震為雷に至る流れを次のように説明している。
☱☲革…弊害が起こってきたので、大改革、革命を行なった。
☲☴鼎…前の王朝を倒して、新しい天子が位についた。
☳☳震…皇太子がこれを相続する。
以上が震為雷の概要である。
ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。以下省略。