以上、一時的には下(下卦)が損して(陽爻が減って)、上(上卦)が得する(陽爻が増える)けれども、結果的には上も下も得することになる。下の立場で見れば「損して得とる」ことであり、上の立場で見れば「得して得する」ことである。
この関係が成立するためには、下にある程度の余裕があることが前提となる。家庭においては、子供にある程度の金銭的な余裕がなければ、両親にお金を渡すことはできない。会社においては、従業員の給与水準が一定以上でなければ、賞与を減らすことはできない。国家においては、国民や企業に一定以上の所得がなければ増税することはできない。これらの条件が整っているからこそ、山澤損の物語は成立するのである。
ところが日本の政治は、この条件が整っていないのに、只管、増税を繰り返している。デフレから脱却するためには、経済活動を活発にすることが求められるのに、消費税率を5%から8%に引き上げて、財政出動により回復しつつあった経済活動に水を差した。その後、8%を10%に引き上げて、景気は著しく悪化した。その直後に世界を襲った「新型コロナ感染症」によって経済活動は大きく落ち込み、国民や企業は困窮した。コロナ禍は三年続き、疲弊しきった国民や企業に対して、今後は防衛費を増額するために増税を検討している。国民に対する思いやりの欠片もなく、只管、下(国民や企業)が損する政策をやり続けている鬼のような日本政府の悪政によって、下(国民や企業)は損し続けて、山澤損☶☱の時は山雷頤☶☳の時に変化して、日本国の資産は失われていった。山雷頤はやがて山地剝☶☷の時となり、日本国消滅の危機が迫ってきている。
このように、上だけ得して下が損し続ける社会は、グローバル資本主義や株主資本主義が招いた人災である。
山澤損を卦象から見ると、上卦艮☶は「どっしりと安定しており、下の人々から尊崇される指導者」である。下卦兌☱は上卦艮☶を仰ぎ観て、その期待に応えようと悦んでいる」のである。上と下とこのような信頼関係で結ばれているから山澤損の時が成り立つのである。このような信頼関係がなければ、山澤損の時はなり立たない。今の日本政府と国民の間には信頼関係が全くないので山澤損の時にならないのである。以下省略。
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