五十一.パニックに陥る時
大災害が発生して対応できなかった時に「想定外だった」と言い訳することがある。想定外なことが起こると、「パニックに陥る時」がある。パニックに陥ると冷静さを失い、どのように対応したらよいか分からなくなる。企業のトップなど人の上に立つ者(リーダー)は、何が起こっても冷静さを失ってはならない。冷静さを失えば事態に対応できなくなり、下の人々を正しくリードすることができない。リーダーたる者、大事変やトラブルに巻き込まれても、冷静さを失わずに事態に適切に対応することが求められる。
「パニックに陥る時」の主人公は「一.がんばる時」と「十三.志を同じくする時」に登場して日本茶専用カフェに商品コーナーを併設した店「智慧の宝箱」を創業した「あなた(わたし)」とその店で働いている「あなた(わたし)」である。
四人のスタッフと「智慧の宝箱」をオープンしてから五年が経過した。一年目は収支トントンだったが、二年目以降は利益が出るようになり、毎年売上・利益共に増え続けている。オープン時は四人だったスタッフも六人となり、全国的に珍しい日本茶専用カフェが多くの方に支持されるようになった。一時間以上かけて来店される遠方のお客様も少なくなく、最近は家の近くに出店してほしいという要望を沢山聞くようになった。店が立地している地域から五十キロくらい離れた地域に住んでいるお客様が一定数いるので、その地域に二号店を出店することを検討することにした。六人のスタッフに意見を聞いてみると、六人とも出店すべきだと言う。一人のスタッフはその地域から通勤しており、地域の事情に詳しいので色々聞いてみると、「智慧の宝箱」が想定しているお客様の年齢層、生活様式、価値観に合致している人が多く住んでいるそうだ。地域の人口も多くオフィス街も充実しているので出店すれば成功することは間違いないだろう。
出店費用も自己資金で賄えるので、その地域から通勤しているスタッフを店長にして二号店を出すことを決めた。経営計画や従業員の確保は店長候補のスタッフに店長としての管理能力を身に付けさせるために自分で作らせることにした。まだ三十前と若いスタッフは二号店の店長を任せられることを大変喜んで、毎日遅くまで残業してわたしから経営計画の作り方を一生懸命学んだ。計画の作り方をある程度理解したところで、「ここからは一人で作ってごらん。分からないところは気軽に聞いてね」と任せた。スタッフは張り切って経営計画を作り終えた。よくできていたので、次は雇用計画(従業員の募集)について教え、計画同様ある程度理解できたところで一人で作らせた。従業員を募集する前に二人で現地に行って出店候補地を探した。オフィス街から駅に向かう好立地にコンビニの跡地があり、不動産会社と交渉すると家賃も手頃だったので出店を決めた。内外装は一号店を出した時の建築士に依頼してオープンまでの準備を整えた。残ったのは従業員の確保である。以下省略。