三十二雷風恒 ☳ ☴ 震上巽下
互卦 四三澤天夬☱☰
綜卦 三一澤山咸☱☶
錯卦 四二風雷益☴☳
若い男女が出逢って結ばれる澤山咸☱☶の次には、結ばれて結婚した男女が幾久しく共に歩む雷風恒☳☴が置かれている。上経(じようけい)が陰陽の働き(天地の道)を示すために、乾為天☰☰と坤為地☷☷から始まるように、下経(かけい)は男女の働き(人の道)を示すために、澤山咸と雷風恒から始まるのである。
澤山咸は若い男女の出逢いに例えられるが、ずあらゆる人間の行為は陽と陰の出逢いから始まる。陽と陰の出逢いから始まった事が継続すれば物事が成就する。それが雷風恒の時である。
澤山咸は上卦に兌☱の少女(若い女性)、下卦に艮☶の少男(若い男性)が居たが、雷風恒は上卦に震☳の長男(年齢を重ねた男性)、下卦に巽☴の長女(年齢を重ねた女性)が居る。澤山咸は若い男が若い女性に謙っていたが、雷風恒は年齢を重ねた女性が年齢を重ねた男性に謙っている。若い男女がお付き合いしている時は男性が女性に慮(おもんぱか)るから仲睦(なかむつ)まじく調和したが、結ばれて結婚して幾久しく共に歩むようになると、家庭を守る女性が外で働く男性を立てて、仲睦まじく調和するようになる。現在は経済成長が止まってしまい、共稼ぎをしないと家計を維持できなくなってしまったが、経済成長を続けていた頃の日本では、多くの女性は専業主婦として家庭を支えていた。
雷風恒は女性が家庭を守り、男性が外で働くという形になっている。上卦下卦は外卦内卦とも云う。外卦震☳の男性が家の外で働いて(震の奮い動く性質)生活費を稼ぎ、内卦巽☴の女性が男性が財布の紐を握って家計を支えたのだ。
夫である外卦震☳には「動く、進む、積極的、決断、勇気がある、意欲がある、勉励(職務に務め励む)」という性質がある。外で働く男性に欠かせない性質である。内卦巽☴には「巽順(柔順)、教化、伝達、応接、斉(ととの)う」という性質がある。家を守る女性に欠かせない性質である。
夫は積極的・意欲的に職務に務め励み、常に動き進んで社会を支える。時には勇気を持って決断し社会の中で信用を得る。妻は夫に柔順に従い、子供を教え導き(教化)、夫の仕事関係者や近所の人々と応接して、善き家庭を築き上げる(斉(ととの)う)のである。
以上が理想的な夫婦の在り方だが、現在の日本は随分変わってしまった陽(男性)と陰(女性)の役割分担が混乱して社会がどんどん壊れいる。実に哀しいことである。以下省略。