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六十四卦の概要 山雷頤

二十七山雷頤 ☶ ☳

 山雷頤は上卦艮☶を上顎(うわあご)(上の歯)と見て、下卦震☳を下顎(したあご)(下の歯)と見る。上顎(うわあご)(上の歯)はどっしりと構えて動かない。上卦艮の性質でもある。下顎(したあご)(下の歯)は上下によく動いて、口の中に入ってくる食べ物を噛み砕く。
 上爻と初爻の間に四つの陰爻が在る。陽爻を充実していると考えると陰爻は空っぽである。つまり、今は中身が空っぽだから必要な物を蓄え養わないとならない。あるいは山雷頤☶☳を八卦に圧縮すると離☲になる。離にも空っぽ(中が空虚なもの)という性質がある。
 以上のことから山雷頤を中身が空っぽな社会・組織・人間等に当て嵌めて考えることができる。今の社会に何が足りないのか、今の組織に何が欠けているのか、今の自分に何が不足しているのか考えて、必要な者を蓄え養うのが山雷頤の時である。
 中身が空っぽな社会とは、社会制度が整っていない社会であろう。その社会の指導者は、今、この社会にどんな制度が必要なのかを考えて、それを何らかの方法で蓄え養う。具体的には封建主義の社会から民主主義の社会に移行する時などが該当するだろう。日本に当て嵌めれば、二百五十年以上も天下太平の時が続いた江戸時代から、近代化を図って身分制度をなくした明治時代に移行した歴史が該当するだろう。地澤臨のところで書いたように、幕末から明治維新に至る流れの中で、日本を近代化に導いた勝海舟や福沢諭吉が「咸臨丸」で米国に渡ったのは、民主主義社会としての制度が全くなかった日本を民主主義化していくために知識を蓄え養うためであった。
 組織を家族に当て嵌めると、男女が結婚して夫婦となり、家に必要な家具類や生活用品を蓄え養い、家庭を築いていくことなどが該当するだろう。人間に当て嵌めると食事を取らずに栄養失調になっている人や長年学ぶことを怠って頭が空っぽになった人である。栄養失調の人は必要な栄養を蓄え養うことが必要であり、頭が空っぽの人は必要な知識を蓄え養うことが必要である。