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六十四卦の概要 地火明夷

三十六地火明夷(ちかめいい) ☷ ☲

 地火明夷は異常事態である。考えようによっては四大難卦よりも辛い時である。六十四卦の中で最も困難な坎為水☵☵の時でも、乗り越えれば将来が開けるけれども、地火明夷の時を乗り越えても異常事態が正常な状態に戻るだけで将来が開けるわけではない。よって、地火明夷の時ほど辛く困難な時はないのである。
 易経の文章は殷王朝の紂王を暗君に例えている。上爻に暗君紂王が君臨して世の中を牛耳っている。暗君紂王を倒さなければ異常事態は終わらない。これを現在に当て嵌めれば、まさしく今の世の中は異常事態である。上卦坤☷の無能無策な政府(自公政権と官僚)が下卦離☲の頭が空虚な大多数の国民と明智明德を具えた少数の国民の上に傲慢に君臨して、国民を苦しめている。
 下卦離☲の国民は三十年も経済成長させることができない無能無策な政府に愛想が尽きて、国民の代表である九三の君子が互体三四五爻の震☳の「奮い動く」性質を最大限に発揮してがんばっているが、互体三四五爻の坎☵の「険難」によって苦しんでいる。政府はこのような国民の艱難辛苦には見向きもせずに何の対策も打とうとしない。税金や社会保険料等公的支出の割合が国民収入の五十%近くにまで達して、江戸時代だったら一揆が起こっても不思議ではない経済状態の中で、臆面もなく国会で増税の議論をしている。これが異常事態でなくて、何が異常事態であろうか。
 戦後の日本社会を覆っている暗君上六の正体は「GHQの呪縛」である。日本は自国の独立と東南アジア諸国の植民地からの解放を目的として米国と戦ったが、戦いに敗れて侵略国家の汚名を着せられた。「GHQの占領政策」で日本人は心の奥深くに贖罪意識を抱くようになった。その意識は戦後、年々高まって、日本が犯した侵略行為を反省することを美德とするようなおかしな風潮が蔓延して、国家体制が崩れ落ちようとしている。
 この「GHQの呪縛」と云う暗君を伐ち倒すことは容易なことではなく、「戦後レジュームからの脱却」や「日本を取り戻す」ことを政治信念として歴代総理の就任期間が最年長記録を達成した安倍晋三元総理は、暗君の逆鱗に触れて暗殺されてしまった。
 今の日本が地火明夷の時から抜け出すためには、「GHQの呪縛」から脱した国民の中から九三の君子が登場するかどうかにかかっている。戦後昏迷を続けてきた政治が、善い方向に変わって行く兆しが見えてきたので、期待したいところである。