清(せい)明(めい)(二十四節氣の五節氣)
【新暦四月四日ころから十八日ころまで】
「春分」の次の二十四節氣は「清明」である。
春の暖かな日差しを受け、天地万物が清らかで生き生きとするころ。「清(せい)浄(じよう)明(めい)潔(けつ)」を略したものが清明です(絵で楽しむ)。
玄鳥至(つばめきたる)(七十二候の候の十三候・清明の初候)
【新暦四月四日ころから八日ころまで】
意味は「燕(玄鳥)が南から飛来する(絵で楽しむ)」である。
「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
燕が海を渡り、南の国から日本へ飛来するころ。本格的な春の農工シーズンの始まりを象徴します。
「玄鳥至(つばめきたる)」は、易経・陰陽消長卦の「雷天大壮」九四に中る。次に「雷天大壮」九四の文章(爻辞と小象伝)を示す。
「雷天大壮」九四の言葉は【新暦四月四日ころから八日ころまで】に当て嵌まる。
雷天大壮九四(易経・陰陽消長卦)
《爻辞》
九四。貞吉悔亡。藩決不羸。壯于大輿之輹。
○九四。貞(てい)にして吉(きつ)、悔(くい)亡(ほろ)ぶ。藩(まがき)決して羸(くるし)まず。大(たい)輿(よ)の輹(とこしばり)に壯(そう)なり。
九四は不中正だが、勢いが盛んで調子に乗ってやり過ぎる(傲(ごう)慢(まん)になったり強(ごう)引(いん)すぎたりする)大壮の時には剛柔調和して宜しきを得る。過ぎたるところがない正しさ(礼による調和)を貫けば宜しきを得て、後悔することはない。
九四の行き先の垣(かき)根(ね)は開いており角(つの)を引っかけるような苦労をせずに進み往くことができる。九四は車軸が堅(けん)固(ご)な大きな車で勇(いさ)ましく進んで小人を平(へい)定(てい)し服従させる。
《小象伝》
象曰、藩決不羸、尚往也。
○象に曰く、藩(まがき)決して羸(くるし)まずとは、往(ゆ)くを尚(たつと)ぶ也(なり)。
小象伝は次のように言っている。九四は過ぎたるところがない正しさ(礼による調和)を貫くので、行き先の垣(かき)根(ね)は開いており、角(つの)を引っかけるような苦労をせずに進み往くことができる。過ぎたるところがない正しさ(礼による調和)を貫くだけでは小人を平定できない。勇ましく進んで行くから小人を平定できるのである。
「雷天大壮」九四の之卦は「地天泰」である。次に「地天泰」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「地天泰」六四の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「雷天大壮」の九四と同じく【新暦四月四日ころから八日ころまで】に当て嵌まる。
地天泰(雷天大壮九四の之卦)
《卦辞・彖辞》
泰、小往大來。吉亨。
○泰(たい)は、小(しよう)往(ゆ)き大(だい)來(き)る。吉にして亨る。
泰は小(上卦坤の陰)が下(か)降(こう)し、大(下卦乾の陽)が上昇して、上下陰陽大いに交(まじ)わる。それゆえ、何事も調和して幸運を招き寄せる。何をやってもうまく行く。
《彖伝》
彖曰、泰小往大來。吉亨、則是天地交而萬物通也。上下交而其志同也。内陽而外陰、内健而外順、内君子而外小人、君子道長、小人道消也。
○彖に曰く、泰は小往き大來る。吉にして亨るとは、則(すなわ)ち是(こ)れ天地交わりて萬(ばん)物(ぶつ)通ずる也。上下交わりて其(そ)の志同じき也。内は陽にして外は陰、内は健にして外は順、内は君子にして外は小人、君子の道長じ、小人の道消(しよう)する也。
彖伝は次のように言っている。泰は小(上卦坤の陰)が上卦(外卦)に往(い)って下降し、大(上卦乾の陽)が下卦(内卦)に来て上昇して、上下陰陽大いに交わる。それゆえ、何事も調和して幸運を招き寄せる。何をやってもうまく行く。天地が交わり、萬(ばん)物(ぶつ)が生成発展するのである。
君德(トップの恩沢)が民(たみ)に普(あまね)く行き渡り、民の尊崇する気持ちが君(トップ)に通じて、君(くん)民(みん)志を同じくして天下泰平となる。内面は君子(下卦乾)の德を備えて、外面にその光を現さない(上卦坤)。内側に剛健な志を抱き、外側は柔順に人に接する。
根幹(内卦)に君子が居て、末端(外卦)に小人が居る。君子の道は盛んに伸びるが、小人の道は衰退するのである。
《大象伝》
象曰、天地交泰。后以財成天地之道、輔相天地之宜、以左右民。
○象に曰く、天地交わるは泰なり。后(きみ)以て天地の道を財(ざい)成(せい)し、天地の宜(ぎ)を輔(ほ)相(しよう)し、以(もつ)て民(たみ)を左右(たす)く。
大象伝は次のように言っている。天地交わり大いに和合するのが泰の卦象である。君主(トップ)はこの卦象に見習って、天地の道を踏み外さないように仁政を行って人の道を補(おぎな)う。萬(ばん)民(みん)に寄り添うように國(組織)を治めるのである。
地天泰六四(雷天大壮九四の之卦・爻辞)
《爻辞》
六四。翩翩不富、以其隣。不戒以孚。
○六四。翩(へん)翩(ぺん)たり。富(と)めりとせずして其(そ)の隣を以(もつ)てす。戒(いまし)めずして以(もつ)て孚(まこと)あり。
柔順正位で君主(トップ)の側近である六四は、泰平が頂点を極めて折り返し地点を過ぎた時に大臣の位に居る。賢人初九を抜擢し泰平を維持すべく、鳥が群がり飛んで行くように下に降る。その位を誇ることなく、同類の六五・上六と連なって謙虚な気持ちで賢人初九に謙(へりくだ)る。自戒せずとも至誠な(真心が厚い)ので初九の信頼を得るのである。
《小象伝》
象曰、翩翩不富、皆失實也。不戒以孚、中心願也。
○象に曰く、翩(へん)翩(ぺん)として富(と)めりとせずとは、皆、實(じつ)を失えば也。戒(いまし)めずして以(もつ)て孚(まこと)ありとは、中(ちゆう)心(しん)願う也。
小象伝は次のように言っている。六四の大臣が賢人初九に謙るのは、統治者である六四・六五・上六は、虚心で富貴を求めないからである。自戒せずとも至誠な(真心が厚い)ので初九の信頼を得るのは、統治者(六四・六五・上六)が心の底から天下泰平を願うからである。