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易経 繋辞下伝を読み解く 第五章 三

2022年1月24日

易曰。困于石。據于しつ藜。入于其宮。不見其妻。凶。子曰。非所困而困焉。名必辱。非所據而據焉。身必危。既辱且危。死期將至。妻其可得見邪。
○易に曰く、「石に困(くる)しみ、蒺(しつ)蔾(り)に拠る。其の宮(きゆう)に入(い)りて、其の妻を見ず。凶なり」と。
 子曰く、困しむ所に非ずして困しめば、名(な)必ず辱められる。拠る所に非ずして拠れば、身必ず危うし。既に辱められ且(か)つ危うければ、死期将(まさ)に至らんとす。妻其れ見るを得(う)可(べ)けんや。
 澤水困(・||・|・易経にある六十四の物語のうち、四大難卦と称される困難な物語)の本文には「柔弱不中正の小人六三は、上に進もうとすれば九四と九五に阻まれ(六三。石に困しみ)、下に進もうとすれば九二に阻まれる。刺のある蔓草(九二のこと)の上に居るように甚だ落ち着かない(蒺藜に據る)。進退阻まれ、家に帰って安んじようとするが、妻は家を出てしまい、誰からも相手にされない(其宮に入りて、其妻を見ず)。八方塞がりでどうにもならない(凶)」と書いてある。この文章について孔子は次のように解説している。
「六三は本来苦しむべきではないことに苦しんでいる。後ろ指を指されて馬鹿にされるほど情けないことである。自分より強い者(九二)の上に乗じて、事を解決しようとすれば、必ず危ない立場に追い込まれる。後ろ指を指されて馬鹿にされるほど情けない状態に陥った上、危ない立場に追い込まれれば、終には死ぬしかない。家に帰ったところで、どうして妻が助けてくれようか。妻はとっくに家を出て、誰からも相手にされないのである」。

易曰。公用射隼于高よう之上。獲之无不利。子曰。隼者禽也。弓矢者器也。射之者人也。君子藏器於身。待時而動。何不利之有。動而不括。是以出而有獲。語成器而動者也。
○易に曰く、「公用(もつ)て隼(はやぶさ)を高(こう)墉(よう)の上に射る。之を獲て利しからざる无し」と。
 子曰く、隼(はやぶさ)は禽(きん)なり。弓(きゆう)矢(し)は器(き)なり。之を射る者は人なり。君子は、器(き)を身に蔵(おさ)め、時を待ちて動く。何の不利かこれ有らん。動きて括(むす)ぼれず。是(ここ)を以て出でて獲(えもの)有り。器(き)を成して動く者を語るなり。
 雷水解(・・|・|・艱難辛苦が解ける時)の本文には「上六は高い城壁の上(解の卦極)に止まっている隼(はやぶさ)のように残忍な小人である。その上六を王公(六五)が九二と九四の補佐を得て射落とすのである(上六。公用て隼を高墉の上に射る)。卦極に止まる小人を捕らえれば険阻艱難は完全に解き去り、何事も順調にゆく(之を獲て利しからざる无し)」と書いてある。この文章について孔子は次のように解説している。
「隼(はやぶさ)は禽獣である。弓矢は禽獣を射る道具である。弓矢を用いて獲物を射るのは人の役割である。君子は、禽獣に遭遇した時に、常に弓矢で獲物を射られるように、あらゆる時に備えて行動する。それ故、何の不利益も招かないのである。妄進・暴走して糸が絡み合うように解けなくなるようなことはない。このようであるから、君子が行動すれば必ず収穫があるのである。雷水解の言葉は、道具を上手に用いれば問題が解決することを示唆しているのである」。