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海神の宮訪問 一

【書き下し文】
是(ここ)に其(そ)の弟(おと)、泣き患(うれ)えて海(うみ)邊(べ)に居(お)りし時に、鹽(しほ)椎(つち)の神、來(き)たりて問いて曰(い)ひしく、「何ぞ虚(そ)空(ら)津(つ)日(ひ)高(こ)の泣き患(うれ)える所由(ゆえ)は」。答えて言(の)りたまひしく、「我(あ)、兄(え)と鉤(つりばり)を易(か)えて其の鉤(つりばり)を失ひき。是(ここ)に其(そ)の鉤(つりばり)を乞(こ)ふが故(ゆえ)に、多(あま)たの鉤(つりばり)を償(つぐな)へども受けずして、『猶(な)ほ其(そ)の本(もと)の鉤(つりばり)を得(え)むと欲(おも)ふ』と云(い)ひき。故(かれ)、泣き患(うれ)ふる」と言(のたま)ひき。爾(しか)くして鹽椎(しほつち)の神、「我(あれ)、汝(なが)命(みこと)の爲(ため)に善(よ)き議(はかりごと)を作(な)さん」と云(い)ひて、即(すなわ)ち无(ま)間(なし)勝(かつ)間(ま)の小(を)船(ぶね)を造(つく)りて、其(そ)の船(ふね)に載(の)せて、敎(おし)へて曰(い)ひしく、「我(あれ)、其(そ)の船を押し流さば、差(やや)暫(しま)らく往(ゆ)け。味(うま)し御路(みち)有(あ)らむ。乃(すなわ)ち其(そ)の道に乘りて往(ゆ)かば、魚鱗(いろこ)の如(ごと)く造(つく)れる宮室(みや)、其(そ)れ綿(わた)津(つ)見(み)の神の宮(みや)ぞ。其(そ)の神の御(み)門(かど)に到(いた)らば、傍(かたはら)の井(い)の上(へ)に湯(ゆ)津(つ)香(か)木(つら)有(あ)らむ。故(かれ)、其(そ)の木の上に坐(いま)さば、其(そ)の海の神の女(むすめ)、見て相議(あひはか)らむぞ」といひき。
故(かれ)、敎(をし)への隨(まにま)に少し行(ゆ)くに、備(つびさ)に其(そ)の言(こと)の如(ごと)し。即(すなわ)ち其(そ)の香木(かつらぎ)に登(のぼ)りて坐(いま)しき。爾(しか)くして海の神の女豐(とよ)玉(たま)毘(ひ)賣(め)の從婢(まかだち)、玉器(たまもひ)を持ちて水を酌(く)まむとする時に、井(い)に光(かげ)有りき。仰(あお)ぎ見れば、麗(うるは)しき壯夫(をとこ)有り。甚(いと)異(あ)奇(や)しと以爲(おも)いき。爾(しか)くして火遠理(ほをり)の命(みこと)、其(そ)の婢(まかだち)を見て、水を得(え)むと欲(おも)うと乞(こ)ひき。婢(まかだち)、乃(すなわ)ち水を酌(く)み、玉器(たまもひ)に入れて貢進(たてまつ)りき。爾(しか)くして水を飮まずして、御頚(みくび)の璵(たま)を解きて口に含(ふふ)み、其(そ)の玉器(たまもひ)に唾(は)き入れき。是(ここ)に其(そ)の璵(たま)、器(もひ)に著(つ)きて、婢(まかだち)璵(たま)を離(はな)すことを得(え)ず。故(かれ)、璵(たま)を著(つ)けし任(まにま)に豐(とよ)玉(たま)毘(ひ)賣(め)の命(みこと)に進(たてまつ)りき。爾(しか)くして其(そ)の璵(たま)を見て、婢(まかだち)に問(と)ひて曰(い)ひしく、「若(も)し人、門(かど)の外(と)に有りや」。答へて曰(い)ひしく、「人(ひと)有りて我(あ)が井(い)の上(へ)の香木(かつら)の上(うへ)に坐(いま)す。甚(いと)麗(うるは)しき壯夫(をとこ)ぞ。我(あ)が王(きみ)に益(ま)して甚(いと)貴(たふと)し。故(かれ)、其(そ)の人(ひと)、水(みづ)を乞(こ)うが故(ゆへ)に水(みづ)を奉(たてまつ)れば、水を飮まずして此(こ)の璵(たま)を唾(は)き入(い)れつ。是(こ)れ離(はな)つことを得ず。故(かれ)、入(い)れし任(まにま)に將(も)ち來(き)て獻(たてまつ)りぬ」。
爾(しか)くして豐(とよ)玉(たま)毘(ひ)賣(め)の命(みこと)、奇(あや)しと思ひて、出(い)で見て、乃(すなわ)ち見感(みめ)でて目合(まぐはひ)して、其(そ)の父に白(まを)して曰(い)ひしく、「吾(あ)が門(かど)に麗(うるは)しき人(ひと)有(あ)り」。爾(しか)くして海の神、自(みずか)ら出(い)で見て、「此(こ)の人は天(あま)津(つ)日(ひ)高(こ)の御子(みこ)、虚(そ)空(ら)津(つ)日(ひ)高(こ)ぞ」と云(い)ひて、即(すなわ)ち内(うち)に率(い)て入(い)りてみちの皮(かは)の疊(たたみ)を八(や)重(へ)に敷(し)き、また絁(きぬ)疊(たたみ)を八重(やへ)に其(そ)の上に敷き、其(そ)の上に坐(いま)せて、百(もも)取(とり)の机代(つくえしろ)の物(もの)を具(そな)へ、御(み)饗(あえ)爲(し)て、即(すなわ)ち其(そ)の女(むすめ)豐(とよ)玉(たま)毘(ひ)賣(め)を婚(あ)はしめき。故(かれ)、三年(みとせ)に至(いた)るまで其(そ)の國に住(す)みたまひき。