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易経(周易)を読み解く 八(乾為天 初九)

初九 ――― ――― (乾為天) 之卦 四四天風姤

爻(こう)辞(じ)・小(しよう)象(しよう)伝(でん)(爻の物語とそれを掘り下げて解説した文章)

初九。潜龍。勿用。
○初(しよ)九(きゆう)。潜(せん)龍(りゆう)なり。用(もち)うる勿(なか)れ。
 初九は無限の可能性を秘めているが、その資質が潜み隠れているので、潜龍と称するのである。だから、潜龍を用いてはならない。世(社会、現場、第一線、表舞台等)に出してはならない。
潜龍勿用、陽在下也。
○潜(せん)龍(りゆう)用(もち)うる勿(なか)れとは、陽にして下に在れば也。
 潜龍を用いてはならない。世(社会、現場、第一線、表舞台等)に出してはならない。今は萬物の根源的なパワー(元氣)を養う時。パワー(元氣)を発揮する時ではない。発揮しようとすれば木っ端みじんに打ち砕かれて、之卦「天風姤」の時に転落してしまう。

文言伝
初九曰、潜龍勿用、何謂也。子曰、龍德而隠者也。不易乎世、不成乎名、遯世无悶、不見是而无悶。樂則行之、憂則違之。確乎其不可抜、潜龍也。
○初九に曰(いわ)く、潜龍用うる勿れとは、何の謂(い)いぞや。
子曰(いわ)く、龍德ありて隠るる者也。世に易(か)えず、名を成さず、世を遯(のが)れて悶(うれ)うること无(な)く、是(ぜ)とせられずして悶(うれ)うること无し。楽しめば之を行い、憂うれば之を違(さ)る。確(かつ)乎(こ)としてそれ抜くべからざるは、潜龍也。
 初九の爻辞にある「潜龍用うる勿れ」とは、どういう意味なのか。
 孔先生(孔子)は次のように説明された。
 潜龍は、君子たる資質を備えながら、未だ発揮できない者である。
 潜龍の段階に在る者は、世の中がどのように変化しようとも、社会的に認められることはない。人前から姿を消してしまいたいと思うほど冷遇される場合すらある。どんなに頑張ろうが、工夫して何をやってもみても、一人前と認められないのである。潜龍の段階に在る者は、どんなに冷遇されても、社会から隠遁してはならないし、憂えてもならないのである。
 やるべきだと確信できる事は、そのやるべき事が如何に苦しくて辛い事でも、その事と一体となって楽しむように行ない、やるべきかどうか確信できない事は、その確信できない事が如何に楽しい事でも絶対にやってはならない。
 潜龍は、やがて君子になって世のため人のために尽くす飛龍の卵である。今は、確乎として抜くことのできない志を打ち立てる段階なのである。
 潜龍は不遇の時代である。だから、何をやっても報われず、やることなすことうまくいかない。潜龍に何をやらせても全く使い物にならないので、誰からも相手にされないのである。
 こんな時に貴方に優しくしてくれる人や貴方の面倒を見てくれる人が現れたら、その人は貴方にとってかけがえのない人である。貴方の人生のパートナーとなる人である。潜龍の時だからこそ、こういう人に出逢うことができるのである。

潜龍勿用、下也。
○潜龍用うる勿れとは、下(しも)なれば也。
 「潜龍用うる勿れ」とあるのは、今はまだ、社会的地位が低いからである。どんなに能力が高い人でも社会的地位が低い段階で、安易に用いてはならないのである。

潜龍勿用、陽氣潜蔵。
○潜龍用うる勿れとは、陽氣潜(せん)蔵(ぞう)すればなり。
 「潜龍用うる勿れ」とあるのは、今はまだ、乾爲天の時の始まりに居り、社会的地位も低いので、君子たる剛健のエネルギー(元氣)が潜(ひそ)み蔵(かく)れており、龍の卦德を発揮することができないからである。

君子以成德爲行、日可見之行也。潜之爲言也、隠而未見、行而未成。是以君子弗用也。
○君子は成(せい)德(とく)を以て行ないを爲(な)し、日(ひび)に之(これ)を行ないに見(あら)わすべき也。潜(せん)の言(げん)たる、隠れて未だ見(あら)われず、行ないて未(いま)だ成らざるなり。是(ここ)を以て君子は用(もち)いざる也。
 君子と称されるのは、人德を磨くために、善行を積み上げて、風格が具わった人物である。このような人物であるから、その日々の行いが、周りの人々を德化するのである。初九を「潜龍」と称するのは、君子たる資質を備えながら、未だ発揮できない段階だからである。それゆえ、何を行っても成功しないのである。
 以上のことから、潜龍の段階で、世(社会、現場、第一線、表舞台等)に出てはならない。

【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇大きな才能と人德を具えているが、今はその才德を用いる時ではない。それゆえ、隠れ伏して時運が至るのを待つべきである。小さな事なら女性を使いに出すがよい。
○目上の人とギクシャクする時である。
○大きな夢や希望を抱いても、実現しない。
○時を待ってから、事業計画を立てて実行するべきである。