十三.志を同じくする時 六十六頁 天火同人 ☰☲
十四.全てが順風満帆な時 七十一頁 火天大有 ☲☰
十五.謙遜して支える時 七十六頁 地山謙 ☷☶
十三天(てん)火(か)同(どう)人(じん) ☰ ☲ 乾上離下 志を同じくする時 六十六頁
天火同人は君子が志を同じくする時である。一陰五陽の一陰が陽に転ずると乾為天☰☰となる。風天小畜☴☰、天澤履☰☱、次の火天大有☲☰、もっと後に登場する澤天夬☱☰、天風姤☰☴、いずれも一陰が陽に転ずると乾為天☰☰となる。
天火同人の二爻が陽に転ずると乾為天の二爻となる。乾為天の二爻は意志強固で天下泰平の志を体現すべく真っ直ぐ前に進んで行く。けれども天火同人の二爻は陰爻だから意志薄弱で私心に囚われ天下泰平の志を体現できない。どうしても自分に囚われて世のため人のために尽くすことができない。
十四火(か)天(てん)大(たい)有(ゆう) ☲ ☰ 離上乾下 全てが順風満帆な時 七十一頁
火天大有は易経六十四卦の中で最も善い時である。最も物事が成就するのは乾為天☰☰だが、乾為天も最後は亢龍となって堕ちていく。最初から最後まで善い状態が続き、最後まで堕ちていかないのが火天大有の時である。
何故火天大有は最後まで堕ちていかないのか。その秘訣は一陰の五爻にある。火天大有の五爻が陽に転ずると乾為天の五爻となる。「飛龍天に在り。大人を見るに利し。」の飛龍である。六十四卦にはそれぞれ六爻あり、六十四×六=三八四爻となる。そのうち、乾為天の五爻が最も大事業を成し遂げられる爻である。剛健そのものである。けれども、五爻はやがて上爻となり「亢龍悔い有り。」となって天から墜ちていく。
乾為天の時は大事業を成し遂げることはできるが、やがて終わりがやって来る。乾為天に限らず六十四卦の時はいつかは終わりを迎える。けれども火天大有をうまく制御すれば幾久しく安泰な時を続けて行くことができる。
十五地(ち)山(ざん)謙(けん) ☷ ☶ 坤上艮下 謙遜して支える時 七十六頁
地山謙は一陽五陰の卦である。上卦坤☷の大地の下に下卦艮☶の山が謙っている。地山謙は剛健で力のある三の陽爻が全体を率いる時である。だが、組織に当て嵌めると三爻は役員ではなく現場の長である。現場の長が組織を率いることは本来あり得ないことである。けれども、三爻にしか組織を率いることはできないので、三爻は大地の下で謙っている艮☶の山のように、表に出ることなく役員に謙って組織を率いることになる。
地山謙三爻が陰に転じると坤為地☷☷になる。坤為地三爻には「章(あや)を含みて貞にす可(べ)し」とある。「章(あや)を含みて」とは能力を包み隠すことである。