二十六山天大畜 ☶ ☰
山天大畜は風天小畜☴☰と比較して解説されることが多い。陽爻の間にある陰爻の大きさで判断して風天小畜が下卦乾天の上に一陰あるだけなので「小蓄」と命名され、山天大畜は下卦乾天の上に二陰あるので「大蓄」と命名された。だが、山天大畜は確かに「蓄え養う時」であるのに対して、風天小畜は「柔よく剛を制する」という意味合いが強く「蓄える」という意味合いはない。卦象を見て大畜あるいは小畜と命名されたのであろう。
山天大畜☶☰は天雷无妄☰☳の綜卦である。綜卦は本卦がひっくり返って本卦の外卦が内卦となるので、本卦の外卦を自分に対する相手とした場合、相手の立場に立った物語となる。
天雷无妄の内卦を人間(自分)、外卦を天(相手)とすると、山天大畜は天の立場に立った物語となる。すなわち、人間の立場に立ったときは思いがけない災害に遭遇して人智では対応が難しい物語であったが、天の立場に立つと自然を蓄え養いよりよい環境を創り出す物語となる。
天雷无妄で引き起こされた自然災害は人間にとっては悲劇だが、天(宇宙)の立場から俯瞰(ふかん)すると、自然災害によって自然環境を刷新して大地(地球)の生命力を更に活性化させたのである。
山天大畜は、とてもよい時である。人間社会に当て嵌めると、ある社会や組織に優れた人材が揃っている。下卦乾☰がそれに中る。社会や組織の現場に優れた人材が揃っていて、剛健な性質を役立てたいと思っている。けれども、社会の指導者層や組織の役員が上でどっしりと制止しているので、動きがとれない。指導者層や役員は意地悪しているわけではない。今すぐ剛健な性質を役立てたいと思っている彼らや彼女らの、今すぐ役立ちたいと逸(はや)る気持ちを抑えて、力を蓄え養って、将来、天下国家のために役立てようと思っているのである。本当に優れた人材の力をじっくりと育てて、世のため人のために使おうというのである。以下省略