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四季と易経 その六十四

水始涸(みずはじめてかる)(七十二候の四十八候・秋分の末候)

【新暦十月三日ころから七日ころまで】
 意味は「田の水を干し始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 田んぼの水を抜いて乾かし、稲刈りに備えるころ。いよいよ収穫の時季です。稲刈りの前に田んぼの水を抜くことを「落し水」、稲を刈り取った後の田んぼを「刈田(かりた)」といいます。

 「水始涸(みずはじめてかる)」は、易経・陰陽消長卦の「天地否」六三に中る。次に「風地観」六三の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「風地観」六三の言葉は【新暦十月三日ころから七日ころまで】に当て嵌まる。

風地観六三(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
六三。觀我生進退。
○六三。我が生(せい)を觀(み)て進(しん)退(たい)す。
 六三は柔順不正で下卦の最上、上に進むか下に退くかという境(さかい)目(め)に居て、出処進退を熟慮している。己の才能や人德、残した功績をよく省(しよう)察(さつ)し、天下の時勢や身近な環境を見極めて、出(しゆつ)処(しよ)進退を決定するがよい。

《小象伝》
象曰、觀我生進退、未失道也。
○象伝に曰く、我が生を觀(み)て進退すとは、未(いま)だ道を失わざる也。
 小象伝は次のように言っている。己の才能や人德、残した功績をよく省(しよう)察(さつ)し、天下の時勢や環境を見極めて、出(しゆつ)処(しよ)進退を決定すべし。
 六三の段階では、未(いま)だ道を得るには至らないが、道に外(はず)れる心配はないのである。

 「風地観」六三の之卦は「風山漸」である。次に「風山漸」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「風山漸」九三の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「風地観」の六三と同じく【新暦十月三日ころから七日ころまで】に当て嵌まる。

風山漸(風地観六三の之卦)

《卦辞・彖辞》
漸、女歸吉。利貞。
○漸(ぜん)は、女(じよ)歸(とつ)ぎて吉。貞しきに利し。
 漸は漸次に(少しずつ)進んで行く時。どっしりと止まっている山(艮)の地中に、樹木(巽)がしっかりと根を張って風が吹いても揺るぐことなく、すっくと聳え立っている。内外の環境に巽(そん)順(じゆん)に適合して着実に成長するのである。
 漸は少男(艮)が長女(巽)に謙って、礼の順序に従って求婚し、長女が応じてお嫁に行くように、漸次に(少しずつ)着実に前進する。それゆえ幸運を招き寄せる。正しい(少しずつ進んで行く)道を固く守って漸進する(少しずつ進む)ことが肝要である。

《彖伝》
彖曰、漸之進也。女歸吉也。進得位、往有功也。進以正、可以正邦也。其位剛得中也。止而巽、動不窮也。
○彖に曰く、漸は之(ゆ)き進む也。女(じよ)歸(とつ)ぎて吉なる也。進みて位を得(え)、往きて功有る也。進むに正しきを以てす、以て邦(くに)を正す可き也。其(その)位(くらい)、剛中を得(う)る也。止(とど)まりて巽、動きて窮(きわ)まらざる也。
 彖伝は次のように言っている。漸は漸(ぜん)次(じ)に(少しずつ)着実に前進する時。少男(艮)が長女(巽)に謙って、礼の順序に従って求婚し、長女が応じてお嫁に行くように、漸次に(少しずつ)着実に前進する。それゆえ幸運を招き寄せる。九五の天子(トップ)は漸次に(少しずつ)前進して位を得、事を為し遂げて大いに成功する。六二・九三・六四も正しい位を得て、任務を立派に果たすのである。九五の天子(トップ)は正しい道を(少しずつ)進むから、国を正すことができる。天子(トップ)の位に居て、剛健にして中庸の德を兼ね具えている。内に泰(たい)然(ぜん)と止まり、外に巽順に適合して、行き詰まることがない。

《大象伝》
象曰、山上有木漸。君子以居賢德善俗。
○象に曰く、山の上に木有るは漸なり。君子以て賢德に居(お)り俗(ぞく)を善(よ)くす。
 大象伝は次のように言っている。山(艮)の上に木(巽)が有るのが漸(ぜん)の形。山の上の木は、漸(ぜん)次(じ)に(少しずつ)着実に成長して、雲を突き抜けるほどの大木になる。君子はこの形に見習って、賢明な道德を習得して己の人間性を磨き、漸次に(少しずつ)着実に民衆を教え導き、風俗が善くなるように民衆を感化するのである。

風山漸九三(風地観六三の之卦・爻辞)

《爻辞》
九三。鴻漸于陸。夫征不復。婦孕不育。凶。利禦寇。
○九三。鴻(こう)、陸(くが)に漸(すす)む。夫(おつと)征(ゆ)きて復(かえ)らず。婦(つま)孕(はら)みて育(いく)せず。凶。寇(あだ)を禦(ふせ)ぐに利し。
 九三は剛健不中でやり過ぎるところがある。大きな雁(かり)(鴻(こう))が大きな岩から小高い平原にまで漸次に(少しずつ)進んで来た。上に応じている爻がないので独断でどんどん進み、比する六四と不義に交わり帰って来ない。六四は九三の妻となり子供を産むが、不義の交わりなのでちゃんと育てることができない。以上のようであるから、何をやっても失敗する。不義の六四と交わることなく、自分の居場所に安んじていることが肝要である。

《小象伝》
象曰、夫征不復、離群醜也。婦孕不育、失其道也。利用禦寇、順相保也。
○象に曰く、夫(おつと)征(ゆ)きて復(かえ)らずとは、群(ぐん)醜(しゆう)を離るる也。婦(つま)孕(はら)みて育(いく)せずとは、其道を失ふ也。用て寇(あだ)を禦(ふせ)ぐに利しとは、順にして相(あい)保(たも)つ也。
 小象伝は次のように言っている。九三は独断でどんどん進み、比する六四と不義に交わり帰って来ない。下卦艮の仲間である初六と六二を見捨てたのである。六四は九三の妻となり子供を産むが、不義の交わりなのでちゃんと育てることができない。漸(ぜん)次(じ)に(少しずつ)進むという正しい道に背いたからである。不義の六四と交わることなく、自分の居場所に安んじていることが肝要である。剛健不中でやり過ぎる性格を抑えて、正しい(漸次に進んで行く)道に柔順に従えば、自分も仲間も守ることができるのである。