漸、女歸吉。利貞。
□漸(ぜん)は、女(じよ)帰(とつ)ぎて吉。貞しきに利し。
木(巽)がどっしりと止まっている山(艮)の頂(いただき)に聳(そび)え立っている。内外の環境に巽(そん)順(じゆん)に適合して着実に成長する。漸は少男(艮)が長女(巽)に礼の順序に従って求婚、長女が応じてお嫁に行く。漸次に着実に前進するので幸を得る。
道を守って漸進するから宜しきを得る。
彖曰、漸之進也。女歸吉也。進得位、往有功也。進以正、可以正邦也。其位剛得中也。止而巽、動不窮也。
□漸は之(ゆ)き進む也。女(じよ)帰(とつ)ぎて吉なる也。進みて位を得、往きて功有る也。進むに正しきを以てす、以て邦(くに)を正す可き也。其(その)位、剛中を得(う)る也。止(とど)まりて巽、動きて窮(きわ)まらざる也。
漸は漸(ぜん)次(じ)に着実に前進する時。少男(艮)が長女(巽)に礼の順序に従って求婚、長女が応じてお嫁に行く。漸次に着実に前進するので幸を得る。
九五は漸次に前進して位を得、事を為して大いに成功する。六二・九三・六四も正しい位を得て、任務を立派に果たすのである。九五は正しい道を進むから、国を正す資格がある。天子の位に居て、剛健中庸の德を兼ね備えている。内に泰(たい)然(ぜん)と止まり、外に巽順に適合して、行き詰まることがない。
象曰、山上有木漸。君子以居賢德善俗。
□山の上に木有るは漸なり。君子以て賢德に居(お)り俗を善くす。
山(艮)の上に木(巽)が有るのが漸の形。山の上の木は、漸次に着実に成長して、雲を突き抜けるほどの大木になる。
君子は、賢明な道德に安住して、漸次に着実に風俗を善くするのである。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)運氣來リテ、徐々ト立身スルノ時トス、故ニ出世スル度ゴトニ、堅ク其位置ヲ踏ミ占メ、輕卒ノ行ヲ爲ス可ラズ、・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)運氣が到来して徐々に立身出世する時である。出世するたびに、その地位をしっかりと固めて、軽率な行動をしてはならない。
○志願していることがなかなか叶わなくても、絶対に成し遂げられる時である。迷わず進み行くがよい。退いてはならない。怠ることなく勤勉に励み続けて、徐々に時が至るのを待つべし。
○進み続ければ、徐々に成果が出て、終には成就する時である。
○内心しっとりと落ち着いた境地で、賢人に委ねて任せれば、どんな道でも切り開いていくことができる。
○ゆったりと或いは徐々に進んで行くべき時である。
○怠ることなく勉強すれば、大いに功を成し遂げられる。
○篤実であることを心がけ、よく人に順うべき時である。
○小さな事を積み上げて、大きな事を成し遂げる時である。
漸 初六 ||・ |・・
初六。鴻漸干干。小子厲。言有无咎。
□初六。鴻(こう)、干(みぎわ)に漸(すす)む。小子は厲(あやう)し。言有れども咎无し。
大きな雁(かり・がん)(鴻(こう))が水際まで漸次に飛んで来た。君子は安んじて漸進するが、初六の如(ごと)き小人や若(じやく)輩(はい)者(もの)は危うい。周りから色々言われるが、咎められるまでには至らない。
象曰、小子之厲、義无咎也。
□小子の厲(あやう)きは、義、咎无き也。
小人や若輩者は危ういが、道義的には咎められない。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)他ヨリ縁談アルカ、或ハ我身上ニ就キ、他人ノ周旋スルアリト雖モ、我承諾セズシテ、人ノ意ニ戻ルノ象アリ、爲ニ我地位一時厲シト雖モ、其意條理アルガ故ニ、・・・