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六十四卦の概要 雷火豊

五十五 雷火豊 ☳ ☲

 雷火豊は大盛運がアッという間に大衰運に転ずる実に怖い時である。下卦離☲の太陽が上卦震☳の動きにより、大きく世の中を動かしている。世の中は活発に活動する太陽のエネルギーを沢山浴びて、どんどん活動を盛んにする。大地に太陽のエネルギーが燦々と降り注ぐので、樹木がアッという間に成長して巨木になる。巨木はどんどん成長していき、人々が暮らしている町並みを覆うようになる。巨木が町並みを覆うので、太陽のエネルギーは全て巨木に吸い取られて、町並みは真っ暗闇となる。樹木がアッという間に巨木に成長するほどの大盛運から、町並みが真っ暗闇となる大衰運に転落するのである。
 太陽を表す下卦離☲には「明智・明德、明瞭、輝く、照らす、美麗、名誉、名声」などの性質があるので、太陽が正常に機能していれば、明るく美しい世の中になる。雷火豊の盛運の側面である。だが、離には「性急、爆発、激しい、虚飾、争う、競う」などの性質があるので、上卦震☳の「轟く、騒ぐ、発する、憤怒、懲らす、罰する、制裁」などの性質が影響して、太陽が激しく雷鳴して、明るく美しい世の中は、アッという間に真っ暗闇になる。
 雷火豊の時を制御している五爻のトップは大盛運を司る名君から大衰運を招き寄せた暗君に没落する。五爻は三四五爻の互体兌の主爻なので、大盛運の時には兌の「調和、潤い、恵み、笑う、悦ぶ」などの性質によって名君と慕われるが、一旦、大衰運に転ずると、兌☱の「罵る、壊れる、欠ける、欠陥、傷、不足、腰砕け、喧嘩する」などの性質によって暗君と蔑(さげず)まれるようになる。
 下卦離☲の主爻である二爻の忠臣は、離の「明智・明德」の性質によって五爻の暗君を啓蒙すれば、五爻の暗君は目覚めて再び名君としての統治を取り戻して臣民に慕われるようになる。ところが、上卦震☳の極み(上爻)で行き詰まり、せっかく取り戻した名君としての統治が崩れて、再び暗君となり、最後は大衰運のどん底でもがき苦しむことになる。