八卦と八卦を重ねると六十四卦(八卦×八卦)となる。八卦は宇宙空間とその中に無数に存在する惑星及び惑星に存在する基本要素である。八卦は宇宙そのものであり、宇宙は八卦によって成り立っている。それゆえ、六十四卦は宇宙で起こるありとあらゆる事象を時の物語として示している。
時の物語は「大きな物語」と「小さな物語」で構成されている。「大きな物語」は卦辞・彖辞、彖伝、大象伝に区分されている。卦辞・彖辞は「大きな物語」の根幹である。「大きな物語」を端的に文章化したのが卦辞・彖辞である。彖伝は卦辞・彖辞を掘り下げて文章化したものである。彖伝を読めば「大きな物語」が何を伝えようとしているかがわかる。大象伝は卦辞・彖辞や彖伝とは異なる切り口で六十四卦(八卦×八卦)の「大きな物語」を構成している八卦の組み合わせの意味と「大きな物語」の時に適切に対応するためには何をすればよいかが書いてある。
一乾(けん)為(い)天(てん) ☰ ☰
六十四卦は上卦下卦とも「乾」で成る「乾為天」から始まる。すなわち上卦も下卦も宇宙の根源的なエネルギー(元氣)で成っている。永遠であり、広大であり、剛強であり、無限であり、無窮である。乾為天の時の物語はあらゆる物事が始まる時の造化の作用である。あらゆる物語は宇宙の根源的なエネルギー(元氣)の発動から始まる。乾為天を「古事記」の神様に例えると伊(い)邪(ざ)那(な)岐(ぎ)の命(みこと)である。「古事記」には伊(い)邪(ざ)那(な)岐(ぎ)の命(みこと)は伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)と交わって地球(一説)と日本列島を生み出したと書いてある。
伊(い)邪(ざ)那(な)岐(ぎ)の命(みこと)と伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)は、高天原の神々から「修理固成」と命じられて地球(一説)と日本列島を生み出したのである。「修理固成」とは、「この宇宙空間に漂っている様々な惑星を修(おさ)め理(つく)り固(かた)め成(な)せ」という地球(一説)と日本列島を生み出す時の理念でありビジョンである。そして、伊(い)邪(ざ)那(な)岐(ぎ)の命(みこと)はこの理念とビジョンを思い描いて宇宙の根源的なエネルギー(元氣)を伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)に発し、そのエネルギー(元氣)を受容した伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)が地球(一説)と日本列島を生み出したのである。
すなわち伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)は、六十四卦の坤為地の役割を担っているのである。以上の「古事記」の物語から、易経(周易)六十四卦の乾為天と坤為地の造化の作用を説明することができる。
乾為天(古事記では伊(い)邪(ざ)那(な)岐(ぎ)の命(みこと))の役割は、物事を始めるに中って宇宙の根源的なエネルギー(元氣)を坤為地(古事記では伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと))に発することである。坤為地(伊(い)邪(ざ)那(な)岐(ぎ)の命(みこと))は乾為天(伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと))が発したエネルギー(元氣)を素直に受け容れて、物事に必要な物やサービスを生み出すのである。
これを人間社会に例えると、会社の社長(乾為天)が経営理念やビジョンを思い描いて、従業員にその熱い思いを伝える。社長の話を聞いた従業員は社長の熱い思いをそのまま素直に受け容れて、商品やサービスを生み出すと云う関係になる。 以下省略