六四 ‥―‥ ――― (水天需) 之卦 四三澤天夬
六四。需于血。出自穴。
○六四。血に需(ま)つ。穴より出(い)づ。
六四は険難に足を踏み入れた(下卦乾天から一歩進み上卦坎水の一番下に位置している)。険難の中で血を流しながらじっと待っている。それゆえ、「血に需(ま)つ」と言う。
辛抱強く時が至るのをじっと待っていれば、やがて九五の天子(トップ)に助けられて、険難(穴)から脱出できる。それゆえ、「穴より出(い)づ」と言う。
象曰、需于血、順以聽也。
○象に曰く、血に需(ま)つとは、順(じゆん)にして以て聽(き)く也。
小象伝は次のように言っている。六四は険難に足を踏み入れた。険難の中で血を流しながらじっと待っているのは、天子(九五)の話(天子の命令・天命)をよく聴いて、素直に順おうと思っているからである。
【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇才能が不足しており、志も低いので、険難の穴の中に陥って大いに困窮する。地位が高い人に助けられ、ようやく険難を脱出することができる。智恵のある人に助けてもらうべきである。
○人と事業を競い合うことは凶運である。争って闘えば怪我をする。
○鉱山事業を営んでいる場合は、人を沢山雇用して(人を沢山集めて)、鉱石を穴から沢山採掘して、利益を得られる。
○険難に遭遇する恐れがある。進んで事を為そうとすれば宜しいことは何もない。退けば吉運を招き寄せる。
九五 ‥―‥ ――― (水天需) 之卦 十一地天泰
九五。需于酒食。貞吉。
○九五。酒(しゆ)食(し)に需(ま)つ。貞なれば吉なり。
九五は剛健中正の理想的な天子(トップ)だが、九二と応じていないのが唯一の欠点である。
慈雨が降ってくる時を待つ需の時に中(あた)り、優(ゆう)游(ゆう)と酒(しゆ)食(し)を楽しみ楽しませ身心を養って時機が至るのを待っている。
大象伝の「雲、天に上(のぼ)るは需なり。君子以て飲食宴樂す」とは九五のことである。内に充実した真心で正しい道を固く守り、時至って天下を平定する。
象曰、酒食貞吉、以中正也。
○象に曰く、酒(しゆ)食(し)の貞(てい)吉(きつ)とは、中(ちゆう)正(せい)なるを以(もつ)て也。
小象伝は次のように言っている。九五は慈雨が降ってくる時を待つ需(じゆ)の時に中り、優(ゆう)游(ゆう)と酒(しゆ)食(し)を楽しみ身心を養って時機が至るのを待っている。内に充実した真心で需の時の正しい道を固く守り、時至って天下を平定する。
九五が中正を具えた天子(トップ)だからである。
【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇宴楽に耽らず、僥倖を求めず、友だちを疑わず、力を合わせて全力を尽くせば、遂には、地位と報酬を得ることができる。
○大衆から厚く信頼されて、尊敬される時である。
○何事も自然に成就する時である。
○大勢の人々が集まって飲食宴楽の賑わいが溢れる時である。
上六 ‥―‥ ――― (水天需) 之卦 九風天小畜
上六。入于穴。有不速之客三人來。敬之終吉。
○上六。穴に入(い)る。速(まね)かざるの客三人來(きた)る有り。之(これ)を敬すれば終(つい)には吉。
上六は坎険の極点で険難の穴に陥ってしまった。才能乏しく自力で穴から抜け出せない。需が窮(きわ)まる時を待っていた三賢人(初九・九二・九三、あるいは予期せぬハプニング)が招いてないのにやって来る。三賢人を忌(い)み嫌わず敬して接すれば、やがて穴から抜け出せる。
象曰、不速之客來。敬之終吉、雖不當位、未大失也。
○象に曰く、速(まね)かざるの客來(きた)る。之(これ)を敬すれば終(つい)には吉(きつ)とは、位(くらい)に當(あた)らずと雖(いえど)も、未(いま)だ大いに失わざる也。
小象伝は次のように言っている。三賢人(初九・九二・九三、あるいは予期せぬハプニング)が招いてないのにやって来る。
三賢人を忌(い)み嫌わず敬して接すれば、やがて穴から抜け出せるのは、上六は君(くん)位(い)ではないが上位に居(お)り、下位の三賢人(あるいは予期せぬハプニング)を敬してその主張に従うので、大きな失敗を犯さず無事に穴から抜け出せると云うことである。
【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇険難の極点に居て、才能も力も弱いので、自分自身の方向性が立たずに、困難に陥っている。それゆえ「穴に入(い)る。坎(かん)険(けん)の極点で険難の穴に陥る。才能乏しく自力で穴から抜け出せない」と云う。「速(まね)かざるの客三人來(きた)る有り。需が窮(きわ)まる時を待っていた三賢人(初九・九二・九三)が招いてないのにやって来る」とは、同じ気持ちを抱いている者同士は求め合い、同じ病気に罹っている者同士は憐れみ合うように、上六が招き寄せるのではなく、お客が勝手にやって来る。この爻は君位ではないが、大衆から慕われるのは、上六が大衆から尊敬される人德を具えているからである。大衆から尊敬される人德を保ち続ければ、険難に遭遇しても、思いがけない支援者が現れて、険難から脱出できる。事の正不正をよくよく知っておくべきである。
○険難の真っ直中に陥って、失望に沈み込む時。人を敬する気持ちを失わずに、時が至るのを待てば、終には吉運を招き寄せる。