幼(よう)童(どう)を誘(ゆう)引(いん)せんが為に
因果の道理を註(ちゆう)す
内(ない)典(でん)外(がい)典(でん)より出(い)だす
見る者誹謗すること勿(なか)れ
聞く者笑いを生ずることなかれ
「童子教」は、幼い子供たちを正しい生き方へと導くために、人間社会における因果の道理を説いたものである。神道(日本の教え)、儒教(志那の教え)、仏教(印度発祥の教え)の言葉や考え方を分かり易く説いている。
「童子教」に書いてあることを読んで、誹謗するなどとんでもないことである。
「童子教」に書いてあることを聞いて、笑うなどとんでもないことである。
日本に古くから伝わる神道、儒教、仏教の教えを幼い子供たちに向けて説いている。

嘗(かつ)ての日本人は「天命に生きる」人生を歩んでいた。「実語教」や「童子教」など、古くから伝わる日本の教えを學んだからである。今の日本人は古くから伝わる日本の教えを學ばなくなってしまった。そろそろ、日本の教えを取り戻さないと、日本が日本でなくなってしまう。そんな思いで本書を書いた。
実語教では「天命」のことを「天地」といい、それは「父母」と「孝」、あるいは「師君」と「仕」の相互作用で成り立つ。そのことを「父母は天地の如く、師君は日月の如し。(中略)父母には朝夕に孝せよ。師君には昼夜に仕えよ」と書いてある。
童子教では「天命」のことを「仏」といい、それは「仏道を求む」と「仏道を成ず」の相互作用で成り立つ。そのことを「(前略)花を折って仏に供する輩(ともがら)は 速やかに蓮(れん)台(だい)の趺(はなぶさ)を結ぶ。上は須(すべから)く仏道を求むべし 中(なか)ばは四(し)恩(おん)を報ずべし。下(しも)は徧(あまね)く六(ろく)道(どう)に及ぶ 共に仏道を成(じよう)ずべし」と書いてある。
実語教と童子教が普及したのは、江戸時代に寺子屋のテキストとして用いられたからである。実語教は平安時代の終わり頃に成立したと言われ、明治時代になっても読まれていたという。何と千年近く子供たちのテキストとして読まれ続けてきたのだ。童子教は鎌倉時代の終わり頃に成立したと言われている。いずれにしても、長い期間にわたって子供たちは「実語教」と「童子教」を読んで人格を形成した。
今の「自分のために生きる」日本人に、是非、「実語教」と「童子教」を読んでいただき、「天命を生きる」人生を歩んでほしいと思う。