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はじめての易経 43.澤天夬

四十三澤(たく)天(てん)夬(かい) ☱ ☰ 兌上乾下

 互卦  一乾爲天☰☰
 綜卦 四四天風姤☰☴
 錯卦 二三山地剝☶☷

 陰陽消長卦の循環で見ると、澤天夬は乾為天の一つ手前だから、大盛運の流れの中にあるが、五陽の上に一陰の暗君が君臨して、全体を覆っている。それゆえ、澤天夬には雷天大壮☳☰のような勢いがなく、乾為天☰☰に抜け出る一歩手前で五陽が一陰に押さえ付けられて足踏み状態となり、大変困窮する時である。
 本卦の上六の暗君は地火明夷の上六の暗君に共通するところがある。社会全体に害悪を及ぼす暗君が一番上に君臨して、社会を覆っている。社会は暗君の害悪に覆われて異常事態に置かれる。暗君を撃ち倒さない限り異常事態は終わらない。本卦も地火明夷も上六の暗君を撃ち倒すのは九三の君子である。上卦を政府、下卦を国民と見れば、九三は国民的ヒーローである。本卦の九三は下卦、互体(二三四と三四五)全てが乾で、剛健・健全・壮盛(乾の性質)だから、力量は絶大である。武力で撃ち倒すことも可能だが、一陰暗君の害悪は五陽を覆い被さり、社会は壊れて(本卦を小成卦で見ると大きな兌となる。兌には壊れる性質がある)となって動きがとれない。初爻から五爻まで陽爻だから力量に問題はない。中身を示す互卦は乾為天☰☰なので無限のパワーを具えているが、暗君の害悪に覆われて、暗君を撃ち倒す決断ができない。それだけ、暗君の害悪は強大なのである。
 本卦も地火明夷も最後の最後に暗君を撃ち倒して異常事態から脱出する。暗君を撃ち倒さなければ異常事態の中に居続けることになる。戦後の日本社会に当て嵌めれば、本卦も地火明夷も暗君は「戦後レジーム」である。GHQのプロパガンダ(政治的な宣伝工作)に見事に騙された日本人は、大東亜戦争が終わって八十年近くも経つのに、未だに「戦後レジーム」の暗君に覆われており異常事態が続いている。
 卦象から見ると、上卦兌の暗君を頂天に戴く政府は、下卦乾の国民を暗君上六の害悪を用いて制御している。巧みな話術で国民を騙して悦んでいる。とんでもない悪政を行っている。制御され続けている下卦乾の国民は、悪政を撃ち倒すべく、まずは足元を固めて力を養い、終には暗君を撃ち倒して(上卦兌には「壊れる・欠ける」性質がある)異常事態から脱出するのである。

 以上が澤天夬の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。(太字を読めば理解できる。)以下省略。