五十四雷(らい)澤(たく)帰(き)妹(まい) ☳ ☱ 震上兌下
互卦 六三水火既濟☵☲
綜卦・錯卦 五三風山漸 ☴☶
雷澤帰妹は自分が何かをやろうとしても思った通りには絶対にできない時である。衰運であり嫌な時である。人生、自分が思った通りにできることなどほとんどない。そういう意味から雷澤帰妹を捉えるならば、自分の思い通りにならない現実と如何に折り合いを付けるかと云う時である。
では、雷澤帰妹を人生に重ねて考えてみる。そもそも自分の出生自体が自分の思い通りにならない。両親を選ぶこともできないし、国家や人種や経済状態などを選ぶこともできない。
わたしたちは、突然、ある国家のある人種のある経済状態のある両親からこの世に生まれ出てくる。自分の思いとは全然関係のないところで、選択の余地なく生まれてくる。生まれてきたことを「よし」とするしかないのである。
わたしたちは、この世に生まれてから死ぬまで、様々な経験をする。その経験のほとんどが自分の思い通りにならない。両親を選べない。兄弟を選べない。親戚を選べない。近所に住んでいる人々を選べない。何もかもが自分の思い通りにはならないことばかりである。自分の思い通りになることなど、長い人生の中で数えるほどしかない。
以上のように考えると、雷澤帰妹から学ぶことは多い。自分の思い通りにならない時に如何に対処すればよいかが雷澤帰妹には書いてある。卦辞・彖辞に「帰妹は往(ゆ)けば凶。利(よろ)しき攸(ところ)无(な)し。/雷澤帰妹の時は、自分の思い通りに何かをやろうとしても、何一つ自分の思い通りにはならない。自分が満足することなど何一つない。」とある。まぁ人生大体こんなものであろう。
黒岩重人著「易を読むために 易学基礎講座」藤原書店には、雷澤帰妹について、次のように書いてある。
【「帰妹」とは、若い女が嫁ぐ意、この卦は、女が嫁ぐことについての道を説いている。(中略)
ところで、六十四卦の中には、男女の結婚の問題を説いた卦が四つある。
☱☶(澤山)咸…悦びはするが、有頂天にはならない。
☳☴(雷風)恒…既に結婚した夫婦の卦。
☴☶(風山)漸…男が女に下って、正しい道に従い、礼の順序を踏んで結婚を求める。
☳☱(雷澤)帰妹…悦んで有頂天になって動きまわる。】
引用は以上。
以上が雷澤帰妹の概要である。
ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。(太字を読めば理解できる。)以下省略。