令和四年四月吉日、Kindleから「周易(易経)を読み解く 六十四卦・文言伝」を出版した。周易(易経)の根幹である六(ろく)十(じゆう)四(し)卦(か)と六十四卦の中でも「乾(けん)為(い)天(てん)」と「坤(こん)為(い)地(ち)」の二つの卦を補足している文(ぶん)言(げん)伝(でん)について、原文(漢文と書き下し文)を丁寧に意訳(わたしの主観を交えた現代語訳)した本である。その後、令和五年六月吉日に「周易(易経)詳解」を出版した。この本は、単に原文を意訳するだけでなく、わたしなりの解釈を加えて六十四卦を詳細に解説、序卦伝の原文及び意訳と柄澤照覚著「易之極意」から「六十四卦大意」の意訳を加えた。
以上の二冊は本格的な周易(易経)解説書なので、初心者には不向きである。今回出版する「人生に役立つ易経」は初心者にも理解できるように意訳してみた。
まえがき
周易(易経、以下易経と表現する)の原型は今から四~五千年前に古代支那の伏羲(ふつき)が考案したと伝わる「八卦(はつか)」と「六(ろく)十(じゆう)四(し)卦(か)」である。日本の国文学者の平田篤(あつ)胤(たね)は伏羲の正体は出雲の国作りを行った大国主の神であると主張している。古代(六千年前)の日本に存在したと伝わる神代文字(ヲシテ文字)の基本概念が陰陽の理論であり、八卦と六十四卦の根底にある陰陽の概念と共通しているからだと著者は解釈している。
その真偽は証明できないが、陰陽の概念を根幹に生み出された八卦とその八卦が重なって出来た六十四卦の物語(単なる物語ではなく、宇宙空間におけるありとあらゆる現象を説明する時の物語)が易経の本質であり魅力である。
わたしがこれまで出版してきた易経の書籍を区分すると「易占い入門」と「本格的な易経の解釈」の二つに分類されるが、今回出版する「人生に役立つ易経」は「初学者のための易経入門書」である。難解になりがちな易経の解釈を初学者でも容易に理解できるように大胆に意訳してみた。多くの人々が本書をきっかけに易経に親しむようになってくれることを願っている。
令和五年八月吉日 易経研究家 白倉信司
易経とは何か
易経の基礎は太(たい)極(きよく)と八卦(はつか)にある。八卦の根源には太極がある。八卦と太極の関係を表したのが八卦太極図である。
左に示した八卦太極図を説明する。太極は宇宙の根源的なエネルギーである。この根源的エネルギーから萬物が誕生する。
太極が存在しなければ何も存在しない。空間も物質もない。時間も感情もない。「無」である。「無」からは何も生まれない。
太極という名の宇宙の根源的なエネルギーがなければ何も存在しない。全ては太極から始まるのである。
陽の記号を「|」で代用する。「一」を陽爻と言う。陰の記号を「・」で代用する。「・」を陰爻と言う。陽爻一に陽爻一と陰爻・を重ね、陰爻・に陽爻|と陰爻・を重ねて四つの記号(大陽||、少陰|・、少陽・|、大陰・・)とし、同じようにして陽爻|と陰爻・を重ねて八つの記号(乾☰、兌☱、離☲、震☳、巽☴、坎☵、艮☶、坤☷)とする。この八つの記号を八卦と言い、八卦を重ねて六十四の記号とし、これを六(ろく)十(じゆう)四(し)卦(か)と言う。六十四卦については、後で説明する。まずは、太極と八卦について説明していく。以下省略。