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六十四卦の概要 兌為澤

五十八 兌為澤 ☱ ☱

 兌為澤☱☱は悦びに悦びが重なって、みんなが調和し、お互いに笑い合う時である。自分の悦びを優先することなく、相手の悦びを自分の悦びとすれば、思いやりの気持が芽生えて、調和した状態を維持することができる。自分の悦びを優先して、相手の悦びを犠牲にすれば、段々人間関係が壊れて喧嘩が始まり、お互い傷付くことになる。悦ぶ状態が長く続けば、悦びは娯楽へと流れて乱れていく。乱れる状態から欠陥が生じて、終には傷付き壊れることになる。悦び調和する状態を維持するためには、お互いに相手の悦びを自分の悦びとすることが肝要である。彖伝に「説(よろこ)びて以て貞(ただ)しきに利(よろ)し。/お互いに相手を思いやり、自分の悦びを優先することなく、相手の悦びを自分の悦びとするから調和している状態を維持できる」とあるのは、このことである。
 兌為澤の卦象を下から追っていくと次のようになる。下卦兌☱には「悦ぶ、和する、潤う、恵む、笑う、楽しむ、応える、魅力」のようなプラスの性質が沢山ある一方で、「艶、誘惑する、娯楽、愛欲、嘆く、弱い、腰砕け、不足、傷、欠ける、欠陥、壊れる」のようなマイナスの性質も沢山ある。悦び悦び合う兌為澤の初期段階では、マイナスの性質を抑えてプラスの性質を引き出していくことが大切である。マイナスの性質は私利私欲によって引き出されるものだから、自分の悦びよりも相手の悦びを優先し、相手の悦びを自分の悦びとする考え方を身に付けることが大事である。
 悦び悦び合う時の初期段階を経ると、二三四爻の互体離☲となる。離☲には「明るい、明瞭、光り、輝く、照らす」などのプラスの性質があるので、この性質を活かして、明るく明瞭で光り輝きお互いを照らし合うような人間関係を醸成する。離☲には「明智・明德・中虚」など「己を虚しくして人を思いやる」性質もある。私利私欲から離れて、人を思いやる人々が増えていけば、悦び悦び合う時はさらに進化していく。この段階を経れば三四五爻の互体巽☴となる。巽には「教化、命令、伝達」の性質があるので、組織全体に私利私欲から離れて、人を思いやることの大切さを教化して、必要に応じてトップダウンで命令を伝達し、組織風土を高める段階に持っていく。仕上げは上卦兌☱の「悦ぶ、和する、潤う、恵む、笑う、楽しむ、応える、魅力」のようなプラスの性質を常時発揮できる組織に育て上げることである。