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六十四卦の概要 風雷益

四十二 風雷益 ☴ ☳

 山澤損☶☱は地天泰☷☰の変形であったが、風雷益☴☳は天地否☰☷の変更である。天地否上卦の四爻が下卦の初爻に下り、下卦の初爻が上卦の四爻に登ると風雷益☴☳となる。天地否☰☷の上卦九四の陽爻が下卦初六の陰爻と入れ替わることにより、陽爻を得た下卦が益して、陽爻を失った上卦が損した。
 これを人間社会に当て嵌めると、家庭においては、収入が増えた両親が子供のお小遣いを増やしたので子供が喜ぶ。両親は懐が寂しくなるけれども子供は両親に感謝するので家庭は円満となる。会社においては、会社の業績が上がったので、従業員の賞与を増やした。会社の利益は減少するけれども、従業員がやる気になってよく働いたので、会社の業績はさらに伸びて、利益も増加して会社は繁栄する。国家においては、好景気で税収が伸びたので、国民に還元しようと減税する。国民や企業は税負担が減少したので支出を増やし景気はさらによくなる。減税したのに税収は増えて政府も国民も企業も豊かになる。
 以上、一時的には上(上卦)が損して(陽爻が減って)、下(下卦)が得する(陽爻が増えた)けれども、結果的には上も下も得することになる。上の立場で見れば「損して得とる」ことであり、下の立場で見れば「得して得する」ことである。
 この関係が成立するためには、上にある程度の余裕があることが前提となる。家庭においては、両親にある程度の金銭的な余裕がなければ、子供のお小遣いを上げることはできない。会社においては、会社の財政状態が健全でなければ、従業員の賞与を増やすことはできない。国家においては、国家の財政状態が良好でなければ減税することはできない。これらの条件が整っているからこそ、風雷益の物語は成立するのである。
 国家には通貨発行権があるので、インフレ懸念がなければ、無制限に通貨を発行しても問題ないとするMTT理論を採用することなく、赤字国債は発行すべきではないというプライマリーバランスを前面に掲げて、国債の発行を抑制する日本政府の財政運営では、。上(上卦)が損して(陽爻が減って)、下(下卦)が得する(陽爻が増える)風雷益の政策を実施することはできない。
 それゆえ、上だけ得して下が損し続ける状態が三十年の続いて、かつて経済大国と称された日本は、発展途上国にも及ばない経済劣等国に成り下がったのである。