四十一山澤損 ☶ ☱
山澤損☶☱は地天泰☷☰の変形である。地天泰の上六が下に降って六三となり、九三が上に昇って上九となったのが山澤損だと云う説である。地天泰☷☰の時には下卦は全て陽爻だったが、山澤損☶☱になると下卦の陽爻は一つ減って上卦に移動した。すなわち、下(下卦)が損して(陽爻が減って)、上(上卦)が得した(陽爻が増えた)と考えるのである。
この考え方を人間社会に当て嵌めると、家庭においては、子供が貰ってきた(稼いできた)お金を両親が貰って、家計の足しにする。子供は損するけれども、家計が増えて家庭が豊かになるので結果的には子供も豊かになる。会社においては、業績が落ちたので、従業員の賞与を減らした。従業員は損するけれども、会社の財政は健全化して、その後業績も伸び、利益も増加する事になるので、次の賞与は倍増して従業員は喜ぶ。国家においては、不景気で税収が落ちたので予算を確保するため、政府は増税する。国民や企業は税金が上がって損するが、増税により増えた税収で政府は経済対策に力を入れるので好景気となり、国民や企業の所得が大きく増えて、結果的に国民や企業は豊かになる。
以上、一時的には下(下卦)が損して(陽爻が減って)、上(上卦)が得する(陽爻が増える)けれども、結果的には上も下も得することになる。下の立場で見れば「損して得とる」ことであり、上の立場で見れば「得して得する」ことである。
この関係が成立するためには、下にある程度の余裕があることが前提となる。家庭においては、子供にある程度の金銭的な余裕がなければ、両親にお金を渡すことはできない。会社においては、従業員の給与水準が一定以上でなければ、賞与を減らすことはできない。国家においては、国民や企業に一定以上の所得がなければ増税することはできない。これらの条件が整っているからこそ、山澤損の物語は成立するのである。
ところが日本の政治は、この条件が整っていないのに、只管、増税を繰り返している。デフレから脱却するためには、経済活動を活発にすることが求められるのに、消費税率を5%から8%に引き上げて、財政出動により回復しつつあった経済活動に水を差した。その後、8%を10%に引き上げて、景気は著しく悪化した。その直後に世界を襲った「新型コロナ感染症」によって経済活動は大きく落ち込み、国民や企業は困窮した。コロナ禍は三年続き、疲弊しきった国民や企業に対して、今後は防衛費を増額するために増税を検討している。国民に対する思いやりの欠片もなく、只管、下(国民や企業)が損する政策をやり続けている鬼のような日本政府の悪政によって、下(国民や企業)は損し続けて、山澤損☶☱の時は山雷頤☶☳の時に変化して、日本国の資産は失われていった。山雷頤はやがて山地剝☶☷の時となり、日本国消滅の危機が迫ってきている。