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時の物語 周易六十四卦 校正 46

六十三.全てが完成した時

 四書五経の大学に「事に終始有り」とあるが、物事には始めがあれば必ず終わりがある。終わる時は全てが完成した時である。ある面から見れば物事が終わり完成することはうれしいことだ。だが別の面から見れば物事が終わり完成することは、もう先がない、伸びしろがないということだ。物事がピークに達すれば(完成すれば)落ちていくしかない。手放しに喜んでいるわけにはいかないのが「全てが完成した時」である。

 「全てが完成した時」の主人公は「四十九.抜本的に変革する時」「五十.新体制を構築する時」「五十九.砕け散ってまとまる時」の舞台となった未来の皇国日本に暮らしている「あなた(わたし)」である。

 江戸末期、日本は西欧列強に屈服せず明治維新で統治体制を刷新して近代国家として自主独立を目指した。日清・日露戦争に勝利して世界の一流国入りしたが、人種差別撤廃を国際社会で主張し西欧列強から疎んぜられ、大東亜戦争に大敗して以来、自主独立の精神を忘れ去ってしまった。その日本が長い眠りから目覚めて自主独立しようとしている。
 明治政府の統治体制を参考に新しい体制を整えた皇国日本は、米国に代表される海外諸国やその背後で世界を制御しようとしているグローバル権力からの影響力を排除するために、秘かに核武装を進めた。戦後のお花畑体制では世界で唯一の被爆国の日本が核武装することはタブーとされたが、「お花畑」から卒業した国民は「被爆国だからこそ二度と被爆しないように核武装すべきだ」と考えるようになった。公言すると核保有国から猛反対されるので極秘裏に核武装は進められた。既に日米安全保障条約は破棄され米軍が日本に駐留していないので他に知られることなく三年後に日本は核保有国となった。核武装と同時進行で三隻の原子力潜水艦が完成した。核は原子力潜水艦に配備され、日本海、東シナ海、太平洋海域の海底をゆっくりと巡航させた。○○党が政権を取り、M総理が誕生してから十年後のことである。M総理は「全世界非核化実現のため被爆国日本が核武装化するに至った理由」を全世界に向けて発信すると共に「世界各国は元より全ての権力機関から日本の自主独立を守るために、日本は核武装するに至った」と核武装の正当性を主張して、「日本の主権を脅かす各国及び諸機関との条約等の取り決めは一方的に破棄する」旨を伝えた。
 M総理は八十歳の誕生日を迎える前に総理の座を降り、○○党の党首選挙を経て事務局長を勤めながら外務大臣を兼ねていた○○党創設者のK総理が誕生した。若い頃から世界各国と交流を重ねていたK総理は凄腕の外務大臣として世界各国に知られていた。M総理の下で実現した日本の自主独立路線と核武装化について世界各国からの理解を得るため、K総理は就任早々世界各国を訪問した。難色を示したのはC国だけで主要な国々は理解を示してくれた。経済植民地から自主独立国へと生まれ変わった日本は五位まで落ちたGDPも二位に返り咲き経済大国の威厳を取り戻した。民間の権力機関に牛耳られている国連やWHOから脱退し日本が中心の国際機関として世界大調和会議を立ち上げた。以下省略。