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易経 繋辞上伝を読み解く 第八章 二

【風澤中孚二爻】
鳴鶴在陰。其子和之。我有好爵。吾與爾靡之。子曰。君子居其室。出其言。善則千里之外應之。況其邇者乎。居其室。出其言。不善則千里之外違之。況其邇者乎。言出乎身。加乎民、行發乎邇。見乎遠。言行君子之樞機。樞機之發、榮辱之主也。言行。君子所以動天地也。可不愼乎。

〇鳴(めい)鶴(かく)陰に在り。其(その)子(こ)、之に和す。我、好爵あり、吾(われ)、爾(なんじ)と之を靡(とも)にせん。子曰く、君子その室に居りてその言を出だす。善ければ千里の外もこれに応ず。いわんやその邇(ちか)き者をや。その室に居りてその言を出だす。善からざれば千里の外もこれに違(たご)う。いわんやその邇き者をや。言は身に出でて民に加わり、行ないは邇きに発して遠きに見(あら)わる。言行は君子の枢機なり。枢機の発は、栄辱の主なり。言行は君子の天地を動かす所以なり。慎(つつし)まざるべけんや。

 風澤中孚の九二の爻辭に「鳴(めい)鶴(かく)、陰に在り。其(その)子(こ)、之に和す。我、好爵有り、吾(われ)、爾(なんじ)と之を靡(とも)にせん(鶴が山の陰で鳴けば、その子鶴は親の姿は見えなくても親の声だとわかり、その声に合せて鳴くのである。そして次のように言う。「わたしはとても恵まれている。わたしは、その恩恵をあなたと分かち合って、共に楽しみたいと思っている)」とあるが、これは心の中に真心があれば、自然にそれが他人に感応することを象徴する句である。
 孔先生がおっしゃった。「君子(滅私奉公を志す人)の言葉は、人知れず家の中でふと漏らしたものであっても、善い言葉であるから、千里も遠く離れた人々にも伝わる。人々は感応して、その言葉に素直に従うのである。まして近いところにいる人々はなおさらのことである。」
 「同じように家の中でふと漏らした言葉であっても、それが悪い言葉であれば、千里も離れた人々も、その言葉に反撥する。まして近いところにいる人々はなおさらである。」
 「言葉が口から出たときは少数の人に伝わるにすぎないが、やがて天下萬民に影響を与えるようになる。行ないもまた身近なところで発動して、遠くまで伝わり、広く天下に影響を与えるのである。」
 「日頃の言葉や行動(言行)は、君子(滅私奉公を志す人)を目指す者にとって君子という弓矢のひきがねのように大切なものである。君子が弓矢を発射する(日頃の言葉や行動の)瞬間に、未来の名誉と恥辱の方向性が決まってしまうのである。日頃の言葉や行動(言行)が、君子がやがて天地をも動かす所以である。」
 「君子を目指す者は、軽々しく物を言ったり事を行ったりしてはならない。すなわち言行には十分慎重でなければならない。」