易経は奇数(陽)と偶数(陰)の二つの交わりに尽きる。けれども所謂偶数(陰)で構成される坤は陰陽消長の消する働きであり、奇数(陽)で構成される乾は長する働きである。天下のあらゆる事柄は陰陽消長の働きである。万物が造化する働きを描くのが易経であり、また国家や社会の人間の活動を描くのも易経である。 今から造化の働きを描く易から始め、漸次に人事を描く易について論及していこう。繋辞伝には次のように書いてある。「易の根源には太極が有る。太極から両儀(陽爻と陰爻)が生まれ、両儀からは四象(陽爻と陰爻を組み合わせた四つの象)が生まれ、四象からは八卦が生まれた。八卦から六十四卦が生まれ、六十四卦にかけられた辞と象によって、吉凶が定まり、示された吉凶により物語が描かれた」と。太極を神道に当て嵌めれば天御中主命、仏教に当て嵌めれば法身(仏の真理)如来(悟った仏)、(一神教に当て嵌めれば)理學者(西洋の學者)が研究するキリスト教とゴット(唯一絶対の神)である。それぞれ名は異なるけれども、その働きは天地創造の根源的な計り知れない力の表れである。この計り知れない力のあらわれを易経では太極と言う。 太極から両儀(陽と陰)が生まれた。清らかな気(陽)が上って天(陽の働き)となり、濁った気(陰)が凝って地(陰の働き)となった。以上が両儀の働きである。天(陽)と地(陰)は元々宇宙の根源である命の泉のパワーを受けて活動を始めたのである。これを陰陽(の交わり)と言う。これを即ち乾坤(陰陽の働き)と名付けた。
白倉信司. 明治十九年出版 高島易斷 卷第一 現代語訳 (pp.26-27). Kindle 版.
