五十六 火山旅 ☲ ☶
火山旅☲☶は下卦艮☶の山の上に上卦離☲の火がある。これを山頂で火事が発生した形と捉え、火の動きを人の動きとし、下卦艮☶の山を見知らぬ土地(旅先・出張先等)として、長期間見知らぬ土地を旅する人、見知らぬ土地で長期間仕事や生活をすることになった人が見知らぬ土地に溶け込むための物語とする。
誰もが長年暮らしている地元に居を構えて、仕事や生活をしたいと思うものである。ところが、色々な都合でどうしても地元を離れて、見知らぬ土地で一定の期間(最低一年・最長一生)旅をしたり仕事や生活をしなければならない時がある。その時にどのように対応すれば、見知らぬ土地の風土や人間関係に溶け込むことができるかを、火山旅の物語は教えてくれる。
卦辞・彖辞に「旅は小しく亨る。旅は貞にして吉。/見知らぬ土地で一定の期間(最低一年・最長一生)旅をしたり仕事や生活をしなければならない時は、大きな事を成し遂げようとしても、なかなか難しいものだが、小さな事なら成し遂げることができる。見知らぬ土地においては、自分はよそ者だと自覚して、よそ者としての正しさを固く守れば吉運を招き寄せる。」とある。
見知らぬ土地の風土や人間関係に溶け込んでいくためには、自分はよそ者だと自覚することが何より大事である。見知らぬ土地の人々にとっては、よそ者は異分子である。どんな仕事をしているのか、どんな性格なのか、家族構成はどうなっているのかなど何も分からない。どのように距離を取ればよいのか、どんな会話をすればよいのか、よく分からない。だから、警戒して見知らぬ土地の人々からよそ者に近付いてくることはあまりない。そこで、見知らぬ土地で一定の期間(最低一年・最長一生)旅をしたり仕事や生活をすることになったよそ者は、いつも笑顔を絶やさず、自分の方から挨拶して、見知らぬ土地の人々に溶け込んでいくように努力することが求められるのである。
卦辞・彖辞にある「旅は貞にして吉。/見知らぬ土地においては、自分はよそ者だと自覚して、よそ者としての正しさを固く守れば吉運を招き寄せる。」の「よそ者としての正しさ」とは、笑顔や挨拶など人間としての謙虚さを常に保つことである。