毎日連載! 易経や易占いに関する情報を毎日アップしています。

四季と易経 その一

四季と易経

 日本における季節区分(和風月明、二十四節氣、七十二候、十二支)と日本発祥の陰陽概念を原理とする易経の陰陽消長卦との関係から読み解く日本人の季節感。

まえがき

 日本には「睦(む)月(つき)(一月)」や「師走(しわす)(十二月)」など季節を表す 「和(わ)風(ふう)月(げつ)明(めい)」と呼ばれる旧暦のことばや「冬至」や「夏至」など一年を春夏秋冬の四季に区分し、さらに四季を六つに区分した「二(に)十(じゆう)四(し)節(せつ)氣(き)」と呼ばれることばがある。また、「節分」や「彼岸」など二十四節氣と同じく季節の変化の目安となる「雑節(ざつせつ)」と呼ばれることばや「立春」や「立冬(りつとう)」など古代の中国でつくられ、日本の気候風土に合わせて改訂が繰り返されてきた「日本の七十二候」と呼ばれることばがある。
 これらの日本に古くから伝わる季節の用語と「七十二候」の「冬至」を起点として季節の一巡を二十四通りの「時の物語(大成卦)」で示した易経の「陰陽消長卦」等を重ねて、日本の四季のことばを並べてみたら面白いものができるかもしれない。
 以上の発想で「二十四節氣」の「冬至」から始めて「大雪」で終わる日本の四季と日本の「やまとことば」を発祥とすると著者が考えている易経のことばを網羅して、日本人の季節感を描き出してみる。
 まずは、一年間を十二に区分した「和風月明」と二十四に区分した「二十四節氣」と「陰陽消長卦」、そして、七十二に区分した「七十二候」の関係を新暦で並べて示してみる。

日本の季節区分を整理する

 日本の季節区分を和風月明と陰陽消長卦と十二支、そして二十四節氣の順序で整理していく。

師走(しわす)と睦(む)月(つき)に中る区分

 まずは、師走と睦月にまたがる陰陽消長卦と十二支、二十四節氣の順序で整理してみる。

師走(しわす)(和風月明)

【新暦十二月一日から三十一日】
 「師走(十二月)」は「師匠が走り回る月」だから師走という。

睦(む)月(つき)(和風月明)

【新暦一月一日から三十一日】
 「睦月(一月)」は「正月に親戚一同が集まって睦(むつ)ぶ(親しくする)」から睦月という。

地雷復(易経・陰陽消長卦)

【新暦十二月二十二日から一月二十一日ころまで】

 筆者は冬至に該当する易経の卦を「坤為地」から「地雷復」と考えており、この考えによると「冬至」は一年で最も昼が短く夜が長い日であると同時に「夏至」から続いてきた昼が短くなる流れが、「冬至」の日のある時から一転し、昼が長くなる流れに転ずる日である。すなわち筆者は昼が最も短くなる「坤為地」の時が転じて、昼が長くなる流れに転ずる「地雷復」の時を「冬至」と考える。
 次に易経の「地雷復」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)を示す。これらの言葉は【十二月二十二日ころから一月二十二日ころまで】に当て嵌まる。

《卦辞・彖辞》
○復は亨(とお)る。出(しゆつ)入(にゆう)、疾(やまい)无(な)く。朋(とも)來(きた)りて咎(とが)无(な)し。其(そ)の道に反(はん)復(ぷく)し、七日にして來(きた)り復(かえ)る。往(ゆ)く攸(ところ)有るに利(よろ)し。
 復は一(いち)陽(よう)来(らい)復(ふく)して(山地剝の一番上に在った一陽が剝落して、陰爻ばかりの坤為地となった後に、一番下に一陽が復って来て地雷復となり)漸次に陽が長じて行く時である。小人(陰)に剝(はく)尽(じん)された君子(陽)の道が次第に伸び栄えていく(陽が長じていく)。
 陽氣が内に入って長ずるのを害するものはなく、陽氣が集まり次第に伸び栄えるので、過失を犯すこともない。陽氣が天地の道を反復往来(陰陽消長)し、剝尽(陽が消え始めて)から七変化(天風姤、天山遯、天地否、風地観、山地剝、坤為地、地雷復)して、また来復(陽が復って来て長じ始める)する。進んで行って事を為すがよい。
《彖伝》
○彖に曰く、復は亨(とお)るとは、剛(ごう)反(かえ)ればなり。動きて順を以て行く。是(ここ)を以て出(しゆつ)入(にゆう)疾(やまい)无(な)く、朋來りて咎无し。其の道に反復し、七日にして來(きた)り復(かえ)るとは、天(てん)行(こう)也(なり)。往く攸(ところ)有るに利しとは、剛長ずれば也。復は其(そ)れ天地の心を見るか。
 彖伝は次のように言っている。復は一陽来復して漸(ぜん)次(じ)(徐々)に陽が長じて行く時。小人(陰)に剝(はく)尽(じん)された君子(陽)の道が次第に伸び栄えていく(陽が長じていく)。一陽来復して陽の勢いがだんだん盛んになって行くのである。
 動く(下卦震)に順(上卦坤)を以てする(上卦坤の母から下卦震の長男が生まれた)。すなわち天地自然の道に順って動き進み行くから、些(いささ)かも無理なところがない。それゆえ陽氣が内に入って(一番下に陽が復って来て)長ずるのを、害するものはない。志を同じくする陽氣が集まって次第に伸び栄えていくので、過失を犯すこともない。
 陽氣が天道を反復往来し、剝尽(陽が消え始めて)から七変化(天風姤、天山遯、天地否、風地観、山地剝、坤為地、地雷復)してまた来復する(陽が復って来て長じ始める)。天地の自然な運行(天地の道)である。進んで行って事を為すがよい。剛陽の勢いが次第に盛んになって行くからである。一陽来復の時はさながら天地の心を見るようである。
《大象伝》
○象に曰く、雷(らい)地中に在(あ)るは復なり。先(せん)王(おう)以て至(し)日(じつ)に關(せき)を閉(と)ぢ、商(しよう)旅(りよ)行かず。后(きみ)方(ほう)を省(かえり)みず。
 大象伝は次のように言っている。復の時は、雷(下卦震・長男)が大地(上卦坤・母)の中に潜んでいる。未だ微弱な陽氣だから大地(母)の中で着実に力を養っているのである。
 昔の王さまは、復(一番下に陽が復って来た)の形に倣って、一陽来復する(陰氣が最大に達して最も日が短くなった次の瞬間、陽氣が下から復ってきて、漸次に日が長くなって行き始める)冬至の日に関所を閉ざして(経済活動や社会の動きを停止して)商人旅人の足を止め(仕事先から自宅に戻り)、自らの巡幸も休み(日頃の活動をお休みして)、陽氣を養い育てる(冬至占を立て来年の運勢を前知して氣力を養い育てる)のである。

子(ね)(十(じゆう)二(に)支(し))

 陰陽消長卦の「地雷復」に当て嵌まる十二支は「子」である。
 北斗七星の形から生まれた字で、「もだえる」に通じる。万物に生命が宿る状態・再び生命が活動し始める状態を指している。(稲田義行著「現代に息づく 陰陽五行 増補改訂版」日本実業出版社、以下、「陰陽五行」と省略する。)
(四季と易経 その一)