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時の物語 周易六十四卦 校正 20

三十七.組織が調和する時

 異常事態の「暗君が支配する時」の次は、あらゆる「組織が調和する時」である。仏教の六道の教えに人間は「天上、人間、修羅、畜生、餓鬼、地獄」の六段階をぐるぐる彷徨っているとある。「暗君が支配する時」が「地獄」なら、「組織が調和する時」は「天上」である。「組織が調和する時」は盛運というよりも人間関係良好運である。人間関係がこれ以上安定している時はない。「十一.安定する時」も同じである。

 「組織が調和する時」の主人公は古風な祖父母と同居している厳格な父と優しい母の下ですくすくと育った長女の「あなた(わたし)」である。

 わたしは地方都市の信用組合に勤めている。地元の短大を出て父の勧めで入行した。今年で三年目、ようやく仕事に慣れてきた。一年目は研修に追われたが、二年目からは融資担当として中小零細企業のお客様を訪問して色々な相談を拝聴している。融資担当の仕事はお客様に喜んで頂くことが多いからやり甲斐がある。お客様の悩みを聞いて、どうすればお役に立てるか毎日考えている。事業が行き詰まり計画通りに返済できなくなったお客様もいるが、お客様と共に事業の立て直しを考え、経営改善計画を作成して返済計画を見直せば大変喜んでくれる。ほとんどの中小零細企業は家族で事業を営んでいる。家族が円満な企業の業績は順調だが、家族が不和な関係になると業績も悪くなる傾向が見られる。わたしは祖父母と父母が同居する古風な家で育ったので家族が円満なことが大切だと考えている。お客様にそんな話をすると、ほとんどのお客様が「そうだねぇ。家族円満が何より大切だねぇ」と同感されるが、「世知辛い世の中になったので、家族円満にやっていくことが難しい」と言われるお客様も少なくない。友達や同僚の中には家族を犠牲にしてまで自分のやりたいことをやっている人がいる。わたしは家族を犠牲にして自分がやりたいことをやるなんて考えられない。
 わたしの父はわたしが勤めている信用組合の役員をしている。商工会議所の会頭や自治会連合会の会長も務めており、地元の名士と言われている。祖父は公務員を経て地元の市長を長年務め市民から慕われた人で孫のわたしから見ても人格者だ。また、母も祖母もいわゆる専業主婦として父や祖父を陰で支え続けた古風な女性である。祖母はいつも祖父に寄り添って祖父の思っていることを先取りして何気なく祖父を支えている。母は家のことを全て任されて忙しい父を陰で支え続けている。わたしはそんな環境で育ったので自然と古風な考え方をするようになった。人間にとって家族が何より大切な存在で、家族を犠牲にした人生なんてあり得ないと思っている。自分中心に考える今の世の中はおかしい。どうしてみんな自分は家族あっての自分だと思わないのだろう。家族や家庭が世の中を支えているのだから、家族が円満であることが世の中をよくすることにつながる。自分中心に考える今の世の中が続いたら社会は壊れてしまう。以下省略。