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陰陽古事記伝 建御雷神の派遣

建(たけ)御(み)雷(かづち)神(のかみ)の派遣

□あらすじ
 出雲の国へ派遣する使者の切り札(武力を背景にしている使者)として、火の迦(か)具(ぐ)土(つち)の神の血から生まれた建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神が選ばれた。建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神は、天(あめの)鳥(とり)船(ふね)の神(鳥のように速く走る船の神)に載って、出雲の国に向かった。

【書き下し文】
是(ここ)に天照大御神、「また曷(いづ)れの神を遣(つかわ)さば吉(よ)けむ」と詔(の)りたまひき。爾(しか)くして思金(おもいかね)の神及び諸(もろもろ)の神の「天(あめ)の安河(やすのかわ)の河上(かわかみ)の天(あめ)の石屋(いわや)に坐(いま)す、名(な)は伊(い)都(つ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり)の神、是(こ)れ遣(つかわ)はすべし。若(も)しまた此(こ)の神に非(あら)ずば、其(そ)の神の子、建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神、此(これ)遣(つかわ)すべし。且(また)、其(そ)の天(あめの)尾(お)羽(は)張(ばり)の神は、逆(さか)しまに天(あめ)の安河(やすのかわ)の水を塞(せ)き上げて、道を塞(ふせ)ぎて居(お)るが故(ゆえ)に、他(あた)し神は行くことを得じ。故(かれ)、別(こと)に天(あめの)迦(か)久(く)の神を遣(つかわ)して問(と)うべし。」と白(まを)しき。故(かれ)、爾(しか)くして天(あめの)迦(か)久(く)の神を使わして、天(あめの)尾(お)羽(は)張(ばり)の神に問いし時に、答えて、「恐(かしこ)し。仕(つか)え奉(たてまつ)らん。然(しか)れども此(こ)の道には、僕(やつかれ)が子、建(たけ)御(み)雷(かづち)の神、遣(つかわ)すべし」と白(まを)して、乃(すなわ)ち貢進(たてまつ)りき。爾(しか)くして、天(あめの)鳥(とり)船(ふね)の神を建(たけ)御(み)雷(かづち)の神に副(そ)えて遣(つか)わしたまひき。

〇通釈(超釈はない)
 出雲の国(葦原(あしはら)の中(なか)つ國)に派遣した使者は二度も失敗してしまったので、天照大御神は「次はどの神を派遣したら成功するであろうか」とおっしゃった。すると思金(おもいかね)の神と諸々の神々が「天(あめ)の安河(やすのかわ)の河上(かわかみ)の山の奥深い所にある天(あめ)の石屋(いわや)に住んでいる伊(い)都(つ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり)の神(伊邪那岐の命が火の迦具土神を斬った時に使った長剣)を派遣するのがよいでしょう。もし、それが難しい時には、その神の子である建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神を派遣するのがよいでしょう。但し、伊(い)都(つ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり)の神(天(あめの)尾(お)羽(は)張(ばり)の神)は、天(あめ)の安河(やすのかわ)の水を塞(せ)き止めて道を塞(ふせ)いでいるので、他の神はその場所へ行くことができません。そこで、山の奥深い所に慣れている天(あめの)迦(か)久(く)の神(鹿の神)を使いにやって、聞いてみたらいかがでしょうか」と申し上げた。
 そこで、天(あめの)迦(か)久(く)の神を使いにやって、伊(い)都(つ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり)の神に聞いてみたところ、「畏れ多いことです。お仕え致しましょう。しかし、今回の派遣は、わたしではなく、わが子建(たけ)御(み)雷(かづち)の神を遣わすべきだと思います。」と答えて、即座に建(たけ)御(み)雷(かづち)の神を差し出した。そこで、天照大御神は建(たけ)御(み)雷(かづち)の神を天(あめの)鳥(とり)船(ふね)の神(鳥のように速く走る船の神)に乗せて、出雲の国(葦原(あしはら)の中(なか)つ國)に派遣したのである。