以上が乾為天の概要である。
ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。
卦(か)辞(じ)・彖(たん)辞(じ)(物語全体の意義を書いている文章)
乾、元亨利貞。
○乾(けん)は元(げん)亨(こう)利(り)貞(てい)。乾(けん)は元(おお)いに亨(とお)りて貞(ただ)しきに利(よろ)し。
乾為天の時は、あらゆる物事が、貴方の力量に応じて最大限に成就する時である。貴方が何かを成し遂げようとすれば、貴方が設定した人生の目的や志(世のため人のために何かを成し遂げたいと願う気持ち)の大きさ(例えば、「事業を通して周りの人々を幸福にしたい」と願う人と「事業を通して日本中の人々を幸福にしたい」と願う人がいた場合、後者の方が人生の目的や志が大きいと考える)を最大限とする力が発揮され、公的な目的や志は、その大きさに比例して成就するのである。
天地の道(公の道)に則って人の道の真ん真ん中を堂々と歩むが宜しい。但し、天地の道に背いて人の道から外れた(公の道を忘れて私利私欲に走った)場合、一時は成果が出るかもしれないが長続きしない(何(いず)れ破綻する)のである。
彖(たん)伝(でん)(卦(か)辞(じ)・彖(たん)辞(じ)を掘り下げて解釈している文章)
彖曰、大哉乾元、萬物資始。乃統天。雲行雨施、品物流形。大明終始、六位時成。時乗六龍、以御天。乾道変化、各正性命、保合大和、乃利貞。首出庶物、萬國咸寧。
○彖に曰く、大いなるかな乾(けん)元(げん)、萬(ばん)物(ぶつ)資(と)りて始(はじ)む。乃(すなわ)ち天を統(す)ぶ。雲行き雨施(ほどこ)して、品(ひん)物(ぶつ)形を流(し)く。大いに終始を明らかにし、六(りく)位(い)時に成る。時に六(りく)龍(りゆう)に乗じ、以(もつ)て天を御(ぎよ)す。乾(けん)道(どう)変化して、各(おの)々(おの)性(せい)命(めい)を正しくし、大(だい)和(わ)を保(ほう)合(ごう)するは、乃(すなわ)ち利(り)貞(てい)なり。庶(しよ)物(ぶつ)に首(しゆ)出(しゆつ)して、萬(ばん)國(こく)咸(ことごと)く寧(やす)し。
なんと偉大であろうか。乾為天の大いに成就する(あらゆる物事が公的な目的や志の大きさに応じて最大限に成し遂げられる)時は。宇宙空間に存在する萬(ばん)物(ぶつ)が(陽の乾と陰の坤が交わることにより)生成発展を始めたのである。
乾為天の大いに成就する(あらゆる物事が人生の目的や志の大きさに応じて最大限に成し遂げられる)力によって天地宇宙に根源的なエネルギー(一大元氣)が満ち溢れ、そのエネルギー(一大元氣)を受容した坤為地の働きによって、萬物が生み出される。
すなわち、雲がモクモク湧き出て慈雨を施し、萬物が一つ一つ形を成して流通する(何もなかったところから形有る事象が生み出される)のである。以下省略。