Ⅹ 第五章(雑多と充溢)の考察
抜粋した第五章の文章の「強くわたしの心に残った箇所」を太文字にした。その中から「肯定的な評価○」を並べてみた。(「否定的な評価△×」はなかった)。
肯定的な評価○
○「この国の下層の人々は、天が創造し給(たま)うたさまざまな下層の人間のなかで、もっとも生き生きとして愉快な人々」
○「街は多様でゆたかなのである。人びとも職業ごとに多様で、街はパフォーマンスに溢れ返っていたのだ」
○「在りし日のこの国の文明について考えるとき、われわれは、それがいかに雑多で細分化された生き場所ないしかくれ家を提供する文明であったということを、つねに念頭に置かねばならない。生態学のニッチという概念を採用するなら、それは棲み分けるニッチの多様豊富という点で際だった文明であった」
○「髷(まげ)を結うためのかたい詰めものを売る店、下駄屋、紙傘の店、日笠雨笠の店、紙の雨合羽や包みの店、人馬のためのわらじを売る店、蓑や箕笠の店、馬の荷(に)鞍(くら)を売る店、そして表通りには漆器店と仏具屋がある。古着屋、扇屋、掛け物を売る店、屏風屋、羽織の紐を売る店、ちりめんを売る店、手拭いの店、煙草道具の店、筆だけを売る店、墨だけ売る店、硯箱しか売らない店、そしてもちろん本屋もある。(中略)羽織の紐だけ、硯箱だけ売って生計が成り立つというのは、何ということだろう。(中略)一定の商品取引量の養える人口が、その分大きいということを意味する。つまりここでは(中略)微細かつ多様な棲み分けが成立しているわけだ。細民のつつましく生きうる空間がここにあった」
