安岡正篤一日一言を読み解く
五月三日の言葉 根に返る
とにかく人間というものは、栄えようと思ったならば、まず何よりも根に返らなければいけない。草木でも、本当に健やかに繁茂(はんも)させようと思ったならば、いたずらに枝葉を伸ばしては駄目で、幹を逞(たくま)しくし、根を深く養わなければならない。根に返ることが大事である。(以上、安岡正篤一日一言から)
根というのは、陰陽相対(待)理論で言う「陰」であります。陰陽相対(待)理論というのは易の根本原理で、物事には全て陰陽があり、そのバランスを取らなければ何事もうまくいかないという考え方です。難しいことはわかりませんが、基本的にはそういう理解でよろしいかと思っています。
陰陽のバランスというのは、陰と陽との比率が半々というのではなくて、陰のほうがほんのちょっと多いというバランスがよいのだと安岡先生はおっしゃっています。草木に例えれば、陰は根や幹で地下に埋まっている部分、陽は枝葉花実で地上に伸びている部分をいいます。枝葉を伸ばそう、花や実をつけようと思ったならば、根を逞しくしなければなりません。根が地中深く伸びることによって、栄養を吸い上げて、幹を逞しくして、枝葉が伸び、花や実がつくのです。
このように陰陽相対(待)理論を草木に例えれば誰もが理解できることですが、わたし達の行動は、枝葉や花実に目を奪われて根に返ることを忘れがちです。企業経営で言えば、売上や利益という目に見えるものに眩まされて、企業の存在意義である企業理念を忘れてしまいがちですし、学問で言えば、知識を習得することに終始して、人格を高めることを怠たりがちです。毎日の生活でも、経済的な活動に心を奪われて、良好な人間関係を構築することを疎かにしがちです。
人間というのは、目先の出来事、目に見える事に囚われがちですが、長期的な視点や、本質か枝葉末節かを見分ける目を持たないと、人生をつまらないものにしてしまいます。
そして、人生を充実させるためには、「何を為すか」よりも「何で在るか」です。
