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時の物語 周易六十四卦 校正 41

五十八.調和し悦び笑い合う時

 組織(小は家庭から大は国家まで)が調和すればみんな悦び笑い合う。悦び過ぎると乱れが生じて調和が崩れる。相手の悦びを自分の悦びとすれば、悦び過ぎて乱れることはない。同志を集めて共に学び善き習慣を身に付け君子(立派な人)になることを目指したい。

 「調和し悦び笑い合う時」の主人公は「四十四.悪魔が忍び込む時」に登場した出版社「日本の心」に勤めている「あなた(わたし)」である。

 わたしは昨年出版社「日本の心」に大学新卒で就職した二十三歳の女性である。「日本の心」に就職した動機は創業明治二十四年という歴史と日本古典の維持普及と研究者の確保を目的にしていることに惹かれたからである。私の父は四書五経の研究者として大学で教鞭を執っていた。母は古事記と日本書紀の研究と普及啓蒙活動をしていた。父母から「日本の心」を直伝されたわたしは小さな頃から日本古典に親しみ、大学では古事記を卒論のテーマとして研究した。「日本の心」が発行している月刊「天命」は高校の時から愛読しており、その時から、就職するなら「日本の心」にしようと心に決めていた。わたしの志は今は忘れられつつある「日本古典」を普及啓蒙することだ。「日本の心」に勤めて生涯をかけて一人でも多くの人々に日本古典の魅力と面白さを伝えたい。今は月刊「天命」の編集アシスタントとして編集者の下で編集作業を学んでいる。早く一人前の編集者となり、テーマの検討や執筆者への依頼と原稿推敲等の仕事をするようになりたい。
 わたしの上司は編集者のTさんである。Tさんは「日本の心」に入社する前は大手出版社の編集者として活躍していたが大好きな日本古典を扱う仕事が年々減少していくので「日本の心」に転職したという。Tさんは大学時代は西洋哲学を専攻していたが、大手出版社に就職し日本古典を担当したことがきっかけで日本古典を研究するようになった。以来日本古典の虜となり生涯かけて日本古典を普及啓蒙したいという志をもっている。ほとんどわたしと同じだが、わたしは古事記を中心にTさんは江戸時代に書かれた四書五経をベースにした日本古典を中心に研究している。Tさんは編集者としても一流だし、部下のわたしをとても大事にしてくれる。わたしは将来Tさんのような編集者になりたい。創業五代目社主(社長)もTさんを高く評価している。わたしとTさんは企画編集部編集課に所属している。直属上司は企画編集部長のHさんである。
 Hさんは入社三十年目のベテラン編集者である。十年前にHさんが企画出版した「武士と日本古典」が大ベストセラーとなり、「日本の心」の認知度は一般の人にも広まった。岩盤支持層に支えられ発行部数十万人前後で推移してきた「日本の心」の看板月刊誌である月刊「天命」の発行部数が二十万人に達したのは「武士と日本古典」の大ヒットに拠るところが大きい。Hさんは企画課長から企画編集部長に昇進した。大ベストセラーを企画したH部長の発言力は強く、「日本の心」の企画編集方針はH部長の意見で左右されるようになった。以下省略。

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