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時の物語 周易六十四卦 校正 38

五十五.名君が暗君に堕落する時

 名君(立派なトップ)によって盛運の中で繁栄していた組織が衰運の真っ只中に陥る時、それが「名君が暗君に堕落する時」である。盛運から衰運に陥ったのは、名君が暗君(愚かなトップ)に堕落したからである。盛運が衰運に転ずるように、自らを律することを怠れば、名君が暗君に堕落する。だが、衰運もやがて盛運に至るように、暗君も名君に生まれ変わることもある。人生塞翁が馬、良くも悪くも前向きに生きていくしかないのである。

 「名君が暗君に堕落する時」の主人公は名君(立派な社長)の父親から事業を引き継いだ暗君(駄目な社長)の「あなた(わたし)」である。

 創業三十年の(株)雷(らい)神(じん)(以下当社と言う)は、後に名君(立派な経営者)と呼ばれた雷(らい)神(じん)剛(つよし)が四十歳の時に創業。斬新な発想とIT技術を駆使してメキメキ頭角を現し、日本のIT市場を席巻した。現在売上高五百億円、従業員数百名の優良企業として多くの日本人に支持されている。雷神剛が七十歳を迎え、側近として仕えてきた生え抜きの花(はな)火(び)豊六十歳が専務取締役から代表取締役に昇進し二代目社長となった。同時に雷神剛の一人娘雷神泉四十五歳が営業部長から専務取締役に昇進。雷神剛は晩年を心静かに生きるため俗世間を離れることを決意し、現役の時から指導を仰いでいた老師の弟子として禅寺で修行僧となった。雷神泉の一人息子雷神尚二十二歳は今年当社に入社し企画開発部に配属された。
 当社の強みはIT企画開発力と営業力にある。特にIT企画開発課係長の見(み)田(た)龍(りゆう)二(じ)三十歳と営業課係長の咸(かん)田(だ)臨(りん)三十二歳の二人は当社のエースとして社内の厚い信頼を得て将来を期待されていた。創業以来快進撃を続け、三十年間増収増益を続けているのも、彼らのようなエース社員を多数抱えているからだ。優れた人材が集まった吸引力は雷神剛の人間的な魅力である。その雷神剛が俗世間から離れ二代目社長花火豊による新体制となった。花火豊も雷神剛から直接学び人間的な魅力を具えているが、雷神剛に比べると見劣りする。花火豊は専務に昇格した雷神剛の一人娘雷神泉が経営者としての資質を身に付けるまでの中継ぎ的な役割を担っている。
 雷神泉は大学卒業後当社に入社し将来の社長候補として二十代でIT企画開発の仕事に携わり、当社の強みである独自のIT技術について理解を深め、三十で営業で取引先との関係を築いた。四十歳で営業部長となり社員との信頼関係を深めて、今回専務取締役に就任した。営業部長の仕事は営業部の社員を束ねて業績を上げることだが、専務の仕事は役員として大局的に会社の経営状態や組織体制を把握して組織を管理することである。専務として一人前になるには、短くても数年間の修行が必要である。以下省略。

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