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陰陽古事記伝 神生み 二

□あらすじ
 伊(い)邪(ざ)那(な)岐(ぎ)の命は嘔吐物と糞尿を垂れ流した。その嘔吐物と糞尿から人間の文明に必要な様々な神々が誕生した。

【書き下し文】
たぐりに成(な)れる神の名(みな)は、金(かな)山(やま)毘(び)古(こ)の神。次に金(かな)山(やま)毘(び)賣(め)の神。次に屎(くそ)に成れる神の名(みな)は、波(は)邇(に)夜(や)須(す)毘(び)古(こ)の神。次に波(は)邇(に)夜(や)須(す)毘(び)賣(め)の神。次に尿(ゆまり)に成れる神の名(みな)は彌(み)都(つ)波(は)能(の)賣(め)の神。次に和(わ)久(く)産(む)巣(す)日(ひ)の神。此の神の子を豐(とよ)宇(う)氣(け)毘(び)賣(め)の神と謂ふ。故(かれ)、伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の神は、火の神を生めるに因(よ)りて、遂(つい)に神(かむ)避(さ)り坐(ま)しき。【天(あめ)の鳥(とり)船(ふね)より豐(とよ)宇(う)氣(け)毘(び)賣(め)の神まで并(あわ)せて八(やつ)神(はしら)】
凡(すべ)て伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)・伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の二(ふた)はしらの神、共に生める嶋は壹(とお)拾(あまり)肆(よつ)の嶋。又、神は參(みそ)拾(あまり)伍(いつ)神(はしら)。
【是(これ)は伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の神、未(いま)だ神(かむ)避(ざ)らぬより前に生む。唯(ただ)、意(お)能(の)碁(ご)呂(ろ)嶋(じま)のみは生むに非(あら)ず。また姪(ひる)子(こ)と淡(あわ)嶋(しま)は子の例(たぐい)に入れず】
故(かれ)、爾(しか)くして伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)、「愛(うつく)しき我(あ)がなに妹(いも)の命(みこと)や、子の一(ひとつ)木(き)に易(かわ)らんと謂(い)うや」と詔(の)りたまひて、乃(すなわ)ち御(み)枕(まくら)方(へ)に匍(はら)匐(ば)い、御(み)足(あと)方(へ)に匍(はら)匐(ば)いて、哭(な)きし時に、御(み)涙(なみだ)に成れる神は、香(かぐ)山(やま)の畝(うね)尾(お)の木(この)本(もと)に坐(いま)す名(みな)を泣(なき)澤(さわ)女(め)の神。故(かれ)、其(そ)の神(かみ)避(さ)りし伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の神は出雲の國と伯(はは)伎(き)の國との堺の比(ひ)婆(ば)の山に葬(ほうむ)りき。

〇通釈(超釈はない)
 嘔吐物から産まれた神さまの名は、金(かな)山(やま)毘(び)古(こ)の神である。次に産まれたのはに金(かな)山(やま)毘(び)賣(め)の神である。
 次に屎(くそ)から産まれた神の名は、波(は)邇(に)夜(や)須(す)毘(び)古(こ)の神である。次に産まれたのは波(は)邇(に)夜(や)須(す)毘(び)賣(め)の神である。
 次に尿(ゆまり)から産まれた神の名は彌(み)都(つ)波(は)能(の)賣(め)の神である。次に産まれたのは和(わ)久(く)産(む)巣(す)日(ひ)の神である。この神の子を豐(とよ)宇(う)氣(け)毘(び)賣(め)の神と云う。
 以上のような経緯で、伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の神は、火の神を産んだことによって、終にお亡くなりになったのである。【天(あめ)の鳥(とり)船(ふね)から豐(とよ)宇(う)氣(け)毘(び)賣(め)の神まで并(あわ)せて八(やつ)神(はしら)である】
 国産みを終えて、神産みに取りかかってから、伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)と伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の二(ふた)柱の神が、共にお産みになった嶋の数は壹(とお)拾(あまり)肆(よつ)である。神の数は參(みそ)拾(あまり)伍(いつ)神(はしら)である。
 【以上の数は伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の神が、お亡くなりになる前に産んだ嶋と神の数である。ただ、意(お)能(の)碁(ご)呂(ろ)嶋(じま)だけは二柱の神がお産みになった数には入れない。また水(ひ)姪(る)子(こ)と淡(あわ)嶋(しま)は嶋の数には入れない】
 そこで、伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)に先立たれた伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)は、「愛しい伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)を、どうして一柱の神(火の迦(か)具(ぐ)土(つち)の神)を産んだことに代えることができようか」とおっしゃって、伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)の亡(なき)骸(がら)の頭の周りでのたうちまわり、足の周りでのたうちまわって、見ているのも気の毒なほど号泣している時に、その涙から産まれた神の名は、香(かぐ)山(やま)の麓(ふもと)の丘の木の下におられる泣(なき)澤(さわ)女(め)の神である。そして、お亡くなりになった伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の神は出雲の国と伯(はは)伎(き)の国との堺の比(ひ)婆(ば)の山に埋(まい)葬(そう)された。

□あらすじ
 愛する妻を亡くした伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)は、その原因となった迦(か)具(ぐ)土(つち)の神の首を切り捨てた。その時、長剣の根本に付着した血から、出雲の国譲りの立役者である建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神が生まれた。

【書き下し文】
是(ここ)に、伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)、御(み)佩(はか)せる十(と)拳(つか)の劍(つるぎ)を拔きて、其(そ)の子迦(か)具(ぐ)土(つち)の神の頚(くび)を斬(き)りき。爾(しか)くして其(そ)の御(み)刀(はかし)の前(さき)に著(つ)ける血、湯(ゆ)津(つ)石(いは)村(むら)に走(たばし)り就(つ)きて成れる神の名(みな)は石(いは)拆(さく)の神。次に根(ね)拆(さく)の神。次に石(いは)筒(つ)之(つ)男(お)の神【三(み)神(はしら)】。次に御(み)刀(はかし)の本(もと)に著(つ)ける血、また湯(ゆ)津(つ)石(いは)村(むら)に走(たばし)り就(つ)きて成れる神の名(みな)は甕(みか)速(はや)日(ひ)の神。次に樋(ひ)速(はや)日(ひ)の神。次に建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神、またの名は建(たけ)布(ふ)都(つ)の神、またの名は豐(とよ)布(ふ)都(つ)の神【三(み)神(はしら)】。次に御(み)刀(はかし)の手(た)上(がみ)に集まれる血、手(たな)俣(また)より漏(くき)出(い)でて成れる神の名(みな)は闇(くら)淤(お)加(か)美(み)の神。次に闇(くら)御(み)津(つ)羽(は)の神。
上(かみ)の件(くだり)の石(いは)拆(さく)の神より下(しも)、闇(くら)御(み)津(つ)羽(は)の神より前(さき)、并(あわ)せて八(や)神(はしら)は、御(み)刀(はかし)に因(よ)りて生れる神なり。

〇通釈(超釈はない)
 愛しい伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の命(みこと)を奪った火の迦(か)具(ぐ)土(つち)の神を許すことができない伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)は、腰に差していた長剣を抜いて、わが子でもある迦具土の神の首を切り捨ててしまったのである。その長剣の先端に付着した火の迦(か)具(ぐ)土(つち)の神の血が、聖なる岩の群れに付着して産まれた神の名は石(いは)拆(さく)の神である。次に産まれたのは根(ね)拆(さく)の神である。次に産まれたのは石(いは)筒(つ)之(つ)男(お)の神である【三(み)神(はしら)】。
 次に長剣の根本に付着した血が、聖なる岩の群れに付着して産まれた神の名は甕(みか)速(はや)日(ひ)の神である。次に産まれたのは樋(ひ)速(はや)日(ひ)の神である。次に産まれたのは建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神である。またの名は建(たけ)布(ふ)都(つ)の神、またの名は豐(とよ)布(ふ)都(つ)の神と云う【三(み)神(はしら)】。
 次に長剣の柄(つか)に付着した血が、指の間から漏れ出て産まれた神の名は闇(くら)淤(お)加(か)美(み)の神である。次に産まれたのは闇(くら)御(み)津(つ)羽(は)の神である。
 以上、石(いは)拆(さく)の神から、闇(くら)御(み)津(つ)羽(は)の神までの八(や)神(はしら)の神は、伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)が腰に差していた長剣から生れた神である。

□あらすじ
 伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)が迦(か)具(ぐ)土(つち)を斬った長剣の名を天(あめ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり)(伊(い)都(つ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり))と云い、この長剣は出雲の国譲りの立役者である建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神の祖(おや)神(がみ)である。

【書き下し文】
殺されし迦(か)具(ぐ)土(つち)の神の頭(かしら)に成れる神の名(みな)は、正(まさ)鹿(か)山(やま)津(つ)見(み)の神。次に胸に成れる神の名は淤(お)縢(ど)山(やま)津(つ)見(み)の神。次に腹に成れる神の名は奧(おく)山(やま)津(つ)見(み)の神。次に陰(はぜ)に成れる神の名(みな)は闇(くら)山(やま)津(づ)見(み)の神。次に左手に成れる神の名(みな)は志(し)藝(ぎ)山(やま)津(つ)見(み)の神。
次に右手に成れる神の名(みな)は、羽(は)山(やま)津(つ)見(み)の神。次に左足に成れる神の名(みな)は、原(はら)山(やま)津(つ)見(み)の神。次に右足に成れる神の名(みな)は、戸(と)山(やま)津(つ)見(み)の神【正(まさ)鹿(か)山(やま)津(つ)見(み)の神より戸(と)山(やま)津(つ)見(み)の神まで、并(あわ)せて八(やつ)神(はしら)】。
故(かれ)、斬(き)れる刀(たち)の名(みな)は天(あめ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり)と謂ふ。またの名(みな)は伊(い)都(つ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり)と謂ふ。

〇通釈(超釈はない)
 伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)に切り捨てられた迦(か)具(ぐ)土(つち)の神の頭(かしら)から産まれた神の名は、正(まさ)鹿(か)山(やま)津(つ)見(み)の神である。次に胸から産まれた神の名は淤(お)縢(ど)山(やま)津(つ)見(み)の神である。次に迦(か)具(ぐ)土(つち)の神の腹から産まれた神の名は奧(おく)山(やま)津(つ)見(み)の神である。次に陰部から産まれた神の名は闇(くら)山(やま)津(づ)見(み)の神である。次に左手から産まれた神の名は志(し)藝(ぎ)山(やま)津(つ)見(み)の神である。次に右手から産まれた神の名は、羽(は)山(やま)津(つ)見(み)の神である。次に左足から産まれた神の名は、原(はら)山(やま)津(つ)見(み)の神である。次に右足から産まれた神の名は、戸(と)山(やま)津(つ)見(み)の神である【正(まさ)鹿(か)山(やま)津(つ)見(み)の神から羽(は)山(やま)津(つ)見(み)の神まで、并(あわ)せて八(やつ)神(はしら)である】。
 そして伊(い)邪(ざ)那(な)岐(き)の命(みこと)が、わが子迦(か)具(ぐ)土(つち)の神を切り捨てた長剣の名を天(あめ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり)と云う。またの名は伊(い)都(つ)之(の)尾(お)羽(は)張(ばり)と云う。

神々(山川草木)創造のまとめ

別天神と伊(い)邪(ざ)那(な)岐(ぎ)と伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の神を除いた神世七代の神(地球・日本の元氣の神様)
伊(い)邪(ざ)那(な)岐(ぎ)の神(地球・日本の陽の神様)
妹(いも)伊(い)邪(ざ)那(な)美(み)の神(地球・日本の陰の神様)
水(ひ)蛭(る)子(こ)(山川草木始まりの神様)
大(おお)綿(わた)津(つ)見(み)の神(海の神様)
大(おお)山(やま)津(つ)見(み)の神(山の神様)
火の迦(か)具(ぐ)土(つち)の神(山川草木終わりの神様)
豐(とよ)宇(う)氣(け)毘(び)賣(め)の神(穀物の神様)
建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神(武力の神様)

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