般(はん)若(にや)心(しん)経(ぎよう)に「色(しき)即(そく)是(ぜ)空(くう)、空(くう)即(そく)是(ぜ)色(しき)」とあるが、「色」とは外面(物質)、「空」とは内面(精神)である。艮為山の時は「色(外面)」に囚われることなく、「空(内面)」を大切にする。
俗世間で起こる出来事は「色(外面)」である。外面的(物質的)に成功しようが失敗しようが、物事が成就しようがしまいが、そんなことには囚われずに、内面的(精神的)に安定している。それが「其(その)背(せ)に艮(とど)まり、其(その)身(み)を獲(え)ず」である。
俗世間の価値観に左右されることなく、どんな状況や状態に置かれたとしても、精神的に安定している。これが「色(しき)即(そく)是(ぜ)空(くう)」の境地である。どんな状況や状態であろうが、精神的に安定しているから、自由自在に生きていける。これが「空(くう)即(そく)是(ぜ)色(しき)」である。このような境地に達するには、自我に囚われてはならない。自我は自分中心の発想であり、「私利私欲」である。「私利私欲」に囚われると、外面的(物質的)な結果に惑わされる。物事が成就すれば喜ぶし、成就しなければ悲しむ。
何事も上手くいく時もあれば、いかない時もある。盛運の時もあれば、衰運の時もある。上手くいこうがいくまいが、盛運であろうが衰運であろうが、いずれも外面的(物質的)な問題であり、自我(私利私欲)に関することである。自我に囚われることなく、物事が上手くいこうがいくまいが、成就しようがしまいが、常に内面的(精神的)に安定している。これが、艮為山の時に目指すべき境地である。
勿論、人間だから喜怒哀楽の気持をなくすことはできない。物事が上手くいったら喜び、いかなかったら悲しむ。けれども、喜びや悲しみの気持をずるずると引きずらない。一旦喜んでも、直ぐに平常心に戻り、一旦悲しんでも直ぐに平常心に戻る。そのように自分の気持ちを制御して、内面的(精神的)にいつも安定していることが大切なのである。以下省略。