本卦の九三は下卦、互体(二三四と三四五)全てが乾で、剛健・健全・壮盛(乾の性質)だから、力量は絶大である。武力で撃ち倒すことも可能だが、一陰暗君の害悪は五陽を覆い被さり、社会は壊れて(本卦を小成卦で見ると大きな兌となる。兌には壊れる性質がある)となって動きがとれない。初爻から五爻まで陽爻だから力量に問題はない。中身を示す互卦は乾為天☰☰なので無限のパワーを具えているが、暗君の害悪に覆われて、暗君を撃ち倒す決断ができない。それだけ、暗君の害悪は強大なのである。
本卦も地火明夷も最後の最後に暗君を撃ち倒して異常事態から脱出する。暗君を撃ち倒さなければ異常事態の中に居続けることになる。戦後の日本社会に当て嵌めれば、本卦も地火明夷も暗君は「戦後レジーム」である。GHQのプロパガンダ(政治的な宣伝工作)に見事に騙された日本人は、大東亜戦争が終わって八十年近くも経つのに、未だに「戦後レジーム」の暗君に覆われており異常事態が続いている。異常事態も八十年近く続けば常態化する。常態化すれば異常事態の中に居る自覚がなくなり、異常事態を異常事態と感じなくなる。異常事態が普通となる。異常事態を普通と感じる人々は、異常事態からの脱出を目指す人々を危険視して社会から除外しようとする。このままでは、いつまでたっても「戦後レジーム」という名の異常事態から抜け出ることができない。どうやら、九三の国民的ヒーローは現れそうもない。異常事態を異常事態と感じて、異常事態から脱出する必要があることを自覚している人々が立ち上がって、一定の勢力となり、自らが国民的ヒーローとなるしか日本を救う方法はないのだ。
卦象から見ると、上卦兌の暗君を頂天に戴く政府は、下卦乾の国民を暗君上六の害悪を用いて制御している。巧みな話術で国民を騙して悦んでいる。とんでもない悪政を行っている。制御され続けている下卦乾の国民は、悪政を撃ち倒すべく、まずは足元を固めて力を養い、終には暗君を撃ち倒して(上卦兌には「壊れる・欠ける」性質がある)異常事態から脱出するのである。以下省略。