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人生に役立つ易経 澤風大過

 澤風大過の文章は比喩的で何を言わんとしているのか理解することが難しいが、次のように考えると納得できる。
 澤風大過の時を人材は豊富だが組織としての基盤が脆弱な中小企業に例える。上爻は創業者で年老いた会長であり、従業員から尊敬されているが実権はなく、すでに経営者としての能力もない。五爻は創業者の息子で二代目の社長である。創業者の跡継ぎとして長年経営に携わってきたが、経営環境の変化に迅速に対応することができずに、組織が弱体化してきた。年齢も六十五を迎えて組織を率いていく経営者としての意欲も能力も衰え始めている。よって、五爻の経営者には弱体化した組織を立て直す力はない。二爻に三代目となる息子が現場の中心となって頑張っているので、そろそろ社長の座を息子に譲りたいと考えている。四爻は二代目社長の従兄弟でやり手の専務である。社長の側近として会社を支えており、実質的に会社を動かしている経営のプロである。会社の脆弱な組織基盤を立て直そうと日々努力している。三爻は生え抜きの優秀な従業員。現場の長として会社の運営を任されているが、自己過信しているところがあり、やり過ぎて脆弱な組織を揺るがしかねない。初爻は専務の娘であり三代目社長候補者の二爻と付き合っており、将来は結婚する約束をしている。現場の中心となって頑張っている二爻を補佐して、父親である専務と力を合わせて脆弱な組織を強固にしようと日々努力している。
 初爻と二爻が力を合わせて組織を強固にしようと努力していることを九二の爻辞で「枯(こ)楊(よう)稊(ひこばえ)を生(しよう)ず」と表現している。初爻と二爻の間に子供が生まれる(将来が開ける)という意味である。
 これに対して、創業者で会長の上爻と二代目社長の五爻が会社のことを心配していることを九五の爻辞で「枯(こ)楊(よう)華(はな)を生(しよう)ず」と表現している。上爻と五爻がいくら心配しても、枯れた柳にあだ花が咲いたようなもので何の役にも立たないと皮肉っている。
 脆弱な組織基盤の中で、やり過ぎないように注意しながら活動して組織を立て直すのは次期社長の二爻と将来の妻である初爻、そして実質的に経営の舵取りをしている専務(五爻・社長の従兄弟で初爻・娘の父親)であるという物語である。
 以上の物語と爻辞の文章を重ねて読むと、難解な爻辞の意味が理解できると思う。

 以上が澤風大過の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。以下省略。

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