風天小畜は柔よく剛を制する典型的な時である。一陰が四爻に位置している。四爻は五爻の側近である。側近がやんわりと全体を制御する時である。また、五爻は四爻の力を借りれば全体を治めることができるので四爻を大切にする。見た目は五爻が四爻の力を借りて全体を治めているように見えるが、実質は五爻は四爻にやんわりと制御されているのである。四爻はそのことを五爻に覚られてはならない。陰が陽を制御していることを表に出してはならない(満月が太陽に代わってはならない)のである。
また四爻は上卦巽☴の主爻(主)である。巽☴には「巽順、入る、隠れる」という性質がある。すなわち組織の中にあって隠れるようにトップの心中に入り込み、巽順な態度でやんわりと組織を制御するのである。決して自分が前面に出てはならない。常にトップを立ててサポートするようにやんわりと組織を制御することが求められる。そうすれば何事もうまくいく。
三四五爻で互体離☲となる。離には「明智・明德・中虚」という性質がある。何事に対しても控え目(中虚)な態度で、明智・明德で対応して己のために謀らない(中虚)ことが肝要である。
以上が風天小畜の概要である。
ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。
小畜、亨。密雲不雨、自我西郊。
○小(しよう)畜(ちく)は亨(とお)る。密(みつ)雲(うん)あれど雨ふらず、我(わ)が西(せい)郊(こう)よりす。
小畜は小(陰・脇役)が大(陽・主役)をやんわりと止める時である。下卦乾が上に進もうとするので上卦巽(そん)が止めようとするが、上卦巽は巽順な性質なので剛健な性質の下卦乾を力で押し止めることはできない。柔順な德で陽のトップ(社長)や父(母)の心を和らげ止め(柔よく剛を制し)てこそ、陰の臣下(部下)や子の志が行われる。
また、下卦乾天は熱エネルギーを発するので大気(天空)に水蒸気が蓄えられる。水蒸気は天空で密雲となるが、上卦巽の風に遮られて雨は地上に降ってこない。
別の見方をすれば、雲(六四の陰)は互(ご)体(たい)兌(だ)(二三四)の西の郊外から湧き起こるが、互体離(三四五)の太陽が照射して雨は降らない。(或いは)六四の陰(雲)が西の郊外から湧き起こるが、陰から働きかけると陰陽和合しないから雨は降らないのである。以下省略。