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マネー主義が後退するか進行するか 三

 七月からは雷地豫の爻辞により、日本社会が置かれる状況を見立ててみる。
 雷地豫の初爻には「初六。鳴(めい)豫(よ)す。凶。初六は才德乏(とぼ)しく卑(いや)しい身分(陰爻陰位で最下)に在(あ)りながら、衆(しゆう)陰(いん)(全ての陰爻を)率(ひき)いる豫(よ)の主(あるじ)九四(初六と応じる関係)に寵(ちよう)愛(あい)され、悦(えつ)楽(らく)の余り声(こわ)色(いろ)を発して人に誇(ほこ)る。このような有(あり)様(さま)では家を失い身を滅ぼし破滅することになる。」とある。雷地豫の下卦坤は日本社会、上卦震雷をマネー主義側と見立てて読み解いていく。
 七月の日本社会は、マネー主義にズブズブに侵された人々が家を失い身を滅ぼし破滅する。
 二爻には「六二。石(いし)に介(かい)す。日を終えず。貞(てい)にして吉(きつ)。六二は柔順中正で応(おう)比(ひ)なく、石のように節(せつ)操(そう)を固く守っている。豫(よ)楽(らく)に耽(たん)溺(でき)してはならぬと自(じ)戒(かい)し、兆(きざ)しを察して正(せい)邪(じや)を見抜き、何か事が起これば、一日が終わる前に速やかに対処する。最後まで正しい道を固く守るので幸運を招き寄せる。」とある。
 八月の日本社会は、マネー主義に侵されていない見識のある人々が。ほとんどの人が「今だけ、金だけ、自分だけ」と考える風潮を憂えて質素で堅実な生き方を貫く。
 三爻には「六三。旰(く)豫(よ)す。悔(く)ゆること遅ければ悔(くい)有り。六三は才(さい)德(とく)乏しい(陰爻陽位)のにやり過ぎる小(しよう)人(じん)である。衆(しゆう)陰(いん)を率いる九四を仰ぎ視(み)て、媚(こ)び諂(へつら)って豫(よ)楽(らく)に耽(たん)溺(でき)する。禍(わざわい)を招き寄せてから後悔しても、取返しがつかない。」とある。
 六三は日本のリーダーである。九月の日本社会は、八月とは打って変わり、マネー主義に侵された日本のリーダーが日本社会をかき乱す。
 四爻には「九四。由(ゆう)豫(よ)す。大いに得る有り。疑(うたが)う勿(なか)れ。朋(とも)盍(あ)い簪(あつ)まる。九四は才德を具えた豫(よ)楽(らく)の主(あるじ)である。衆(しゆう)陰(いん)を率(ひき)いて天下を治めるので、上下萬(ばん)民(みん)大いに豫楽を得る。六五の天子・トップの補佐役・側近として、嫉妬と疑惑が蠢(うごめ)く厲(あやう)い地位に在るが、決して人を疑ってはならぬ。至誠を尽くせば同志が集い、豫(よ)楽(らく)の時を助け合う。至誠を失えば…」とある。
 十月はマネー主義を操る権力者の話である。マネー主義を操る権力者は決して表に出てはならないのだが、表に出てしまいかねないリスクを犯す。庶民を食い物にするマネー主義はいつまでも続かないのである。
 五爻には「六五。貞(てい)にして疾(や)む。恆(つね)にして死せず。六五の天子(トップ)は補佐役(側近)九四に制御されて、豫(よ)楽(らく)に耽(たん)溺(でき)することができずに、慢性化した憂(うれ)いが常にある。常に九四に制御される運命から逃れることはできないが、天子(トップ)の地位を失うことはない。」とある。
 十一月になると、米国と中国の政権に慢性化した病のような行き詰まり感が漂う。
 上爻には「上六。冥(めい)豫(よ)す。成(な)れども渝(かわ)る有れば、咎(とが)无し。上六は豫(よ)楽(らく)の極(きよく)点(てん)で長期間豫楽に耽(たん)溺(でき)しているので、健全な心を喪失している。豫楽が極(きわ)まれば悲哀に変ずる天理を知らない愚(おろ)か者である。豫楽に耽(たん)溺(でき)している己の愚かさを覚(さと)り、心を入れ替えれば、更生することができる。」とある。
 十二月になると、いよいよマネー主義体制が壊れはじめる。「今だけ、金だけ、自分だけ」などと云う考え方や生き方が長続きするはずはない。二百年近くの長期に渡ってマネー主義に苦しめられてきた庶民が立ち上がる時がやってきたのである。

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