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易経 繋辞上伝を読み解く 第十一章 三

是故。易有太極。是生兩儀。兩儀生四象。四象生八卦。八卦定吉凶。吉凶生大業。
○是(こ)の故に、易に太極有り、是れ兩(りよう)儀(ぎ)を生ず。兩儀、四(し)象(しよう)を生ず。四象、八卦を生ず。八卦、吉凶を定む。吉凶、大業を生ず。
 易が神仏と通じているのは、宇宙を司るエネルギー(氣)を「太極」と名付けて易の根源(命の泉)に据(す)えたからである。宇宙の根源である太極の中には陽の働き(|)と陰の働き(・)が混在しているが、夫々の働きを取り出したのが、陰(・)陽(|)兩儀である。その陰陽兩儀から四つの象(|| ・| |・ ・・)が生まれ、四つの象から八卦(||| ・|| |・| ・・| ||・ ・|・ |・・ ・・・)が生まれた。八卦は来るべき時の吉凶の兆しを含んでおり、八卦と八卦を組み合わせると六十四卦となる。六十四卦の卦象や辞には、吉凶の兆しと方向性が示されており、その兆しと方向性に導かれて諸々の大いなる事業が展開される。

是故。法象莫大乎天地。變通莫大乎四時。縣象著明。莫大乎日月。崇高莫大乎富貴。備物致用。立(象)成器。以爲天下利。莫大乎聖人。探賾索隱。鈎深致遠。以定天下之吉凶。成天下之亹亹者。莫大乎蓍龜。
○是(こ)の故に、法(ほう)象(しよう)は天地よりも大いなるは莫(な)し。變通は四(しい)時(じ)よりも大いなるは莫(な)し。縣(けん)象(しよう)著(ちよ)明(めい)なるは、日月よりも大いなるは莫し。崇高は富貴よりも大いなるは莫し。物を備へ用を致し、(象を)立て器を成し、以て天下の利を爲すは、聖人よりも大いなるは莫し。賾(ふか)きを探(さぐ)り隱(かく)れたるをめ、深きを鈎(つ)り遠きを致し、以て天下の吉凶を定め、天下の亹(び)亹(び)たるを成す者は、蓍(し)龜(き)よりも大いなるは莫し。
 以上のようであるから、陰陽交わって生み出された萬物の中で天地(宇宙空間と諸々の惑星)よりも大きなものはない。また、陰陽消長変化する自然現象の中で春夏秋冬の変化よりも大きなものはない。そして、天地自然の形象の中で太陽や月ほど存在感が大きなものはない。人間社会で最も尊崇されるのは天下を治め(富)ている天子(中国では皇帝・日本では天皇)である。それゆえ、天子の位(貴)に就いている者以上に偉大な存在はない。また、物資を準備して運用し、易の卦象に則って文明社会を発展させ、天下萬民に利益をもたらす人物として、聖人よりも偉大な存在はない。奥深く隠されている道理を探り出し、釣り針を深くまで垂らして遠いところのものを引き寄せ、吉凶禍福を予測・予知して、天下萬民が正しい方向に進むべく叱咤激励できるのは、筮竹や亀甲を用いた易占い以上に優れたツールはない。

是故。天生神物。聖人則之。天地變化。聖人效之。天垂象見吉凶。聖人象之。河出圖洛出書。聖人則之。易有四象。所以示也。辭繋焉所以告也。定之以吉凶。所以斷也。
○是(こ)の故に、天、神(しん)物(ぶつ)を生じ、聖人、之に則る。天地變化し、聖人、之に效(なら)ふ。天、象を垂れて吉凶を見(あら)はし、聖人、之に象る。河(か)、圖(と)を出(いだ)し、洛(らく)、書を出し、聖人、之に則る。易に四(し)象(しよう)有るは、示す所以也。辭(じ)を繋(つな)くるは、告ぐる所以也。之を定むるに吉凶を以てするは、斷ずる所以也。
 易占い以上に優れたツールはないから、天は神秘的な蓍(し)(筮竹)や亀甲を生み出し、聖人は筮竹や亀甲を用いて易占いを法則化した。天地は陰陽交わり変化して萬物を生み出し、聖人はこれに倣って易の変化の道理を示した。天は日月星辰などの形象を八卦に見立てて吉凶を示し、聖人はあらゆる事象を六十四卦に見立てて、その卦象により吉凶を示した。聖人は吉祥を暗示する「河(か)図(と)」「洛(らく)書(しよ)」の伝説に従って、易の数理を考察し、五行の生(せい)剋(こく)の道理を定めた。易に四象が有るのは、陰陽の変化を爻によって示すためである。卦爻に言葉をかけているのは、来るべき時の物語を明示するためである。卦爻辞に吉凶を定めるのは、来るべき時に対処するに中って迷いや疑いを断ち切るためである。

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