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時の物語 周易六十四卦 校正 23

四十.困難が解決した時

 困難とは「三.新しいものを産み出す時」「二十九.人生で最も辛い時」「三十九.立ち止まって考える時」で経験した困難である。これらの困難が解決した時に何をなすべきかが「困難が解決した時」に書いてある。ほとんどの場合、完全に困難が解決することはない。何らかの課題が残されているものだ。大きな困難が解決した時に残された小さな課題を見逃してはならない。小さな課題を早く見付け速やかに対処することが求められる。

 「困難が解決した時」の主人公は、「立ち止まって考える時」に登場したに創業三百年の歴史を誇る地方の老舗企業「江戸屋」で専務を務めている「あなた(わたし)」である。

 わたしは生まれ育った故郷で三百年前に創業して伝統的工芸品を製造販売している江戸屋で専務を仰せつかっている。江戸屋は創業以来今日に至るまで地元の人々に親しまれている企業でわたしも小さな頃から知っていた。地元の本店を拠点に東京に支店も出し、最近ではネットショップを開設して全世界で販売している。わたしは大学卒業後、東京の会社で働いていたが、都会の生活は肌に合わず故郷に戻り「江戸屋」に中途採用して頂いた。「思いやり」を社風とする江戸屋の仕事はわたしの肌に合っており、利益追求に終始する東京の会社で働いていた時とは比べようがないほど充実している。毎日仕事がおもしろくて、無我夢中で仕事をしてきた。気が付くと五十半ばを過ぎており、過分なことに今は専務取締役を仰せつかって、創業家の社長・会長と共に役員として仕事をしている。
 「三十九.立ち止まって考える時」に詳しく書いてあるが、二十年ほど前から「思いやり」を社風とする江戸屋の人材確保が年々難しくなり、十八代目の社長が就任してから抜本的な対策を打つことになった。これまで入社後三ヶ月の期間で実施してきた新入社員研修のあり方を抜本的に見直し、入社した年は現場の業務に就かず役員補佐担当という部署で一年間役員から直接「思いやり教育」を受けることになった。戦後の詰め込み教育で育った新入社員は「思いやり」について何も学んでいない。これまでは現場の仕事を担当しながら研修を受けていたので、時間的・精神的な余裕がなく「思いやり」とは何かを心から理解するには至らなかった。それが「思いやり」の人材不足につながったので、入社後一年間は「思いやり」教育期間として社長をはじめ役員から直接帝王学を学ぶことにしたのだ。現社長就任二年目に役員補佐担当の部署はスタートした。専務のわたしが役員補佐担当部長を兼務して研修カリキュラムを作成し新入社員に帝王学を教えることになった。
 役員担当部署の創設については、凡そ百人いる社員のほとんどが理解・共感しているが、中には批判的な社員もいる。言葉には出さないが、自分が新入社員だった時と比べて待遇が良すぎるという不満を抱いているようだ。わたしの直属の部下である営業部長と商品開発部長は表面的には役員担当部署に理解を示しているが、内心不満を抱えているのは、その言動から伝わってくる。以下省略。

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