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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)38

三十七.組織が調和する時

 異常事態の「暗君が支配する時」の次は、あらゆる「組織が調和する時」である。仏教の六道の教えに人間は「天上、人間、修羅、畜生、餓鬼、地獄」の六段階をぐるぐる彷徨っているとあるが、「暗君が支配する時」が「地獄」の時なら、「組織が調和する時」は「天上」の時である。「組織が調和する時」は盛運というよりも人間関係良好運である。人間関係がこれ以上安定している時はない。「十一.安定する時」も同じである。

 「組織が調和する時」の主人公は古風な祖父母と同居している厳格な父と優しい母の下ですくすくと育った長女の「あなた(わたし)」である。

 わたしは地方都市の信用組合に勤めている。地元の短大を出て父の勧めで入行した。今年で三年目、ようやく仕事に慣れてきた。一年目は研修に追われたが、二年目からは融資担当として中小零細企業のお客様を訪問して色々な相談を拝聴している。融資担当の仕事はお客様に喜んで頂くことが多いからやり甲斐がある。お客様の悩みを聞いて、どうすればお役に立てるかを毎日考えている。事業が行き詰まって計画通りに返済できなくなったお客様もおられるが、色々事情を聞いてお客様と共に事業の立て直しを考え、経営改善計画を作成して返済計画を見直しすれば大変喜んでくださる。中小零細企業は家族で事業を営んでいるところがほとんどだが、家族が円満でやっておられる企業の業績は順調だが、家族が不和な関係になると業績も悪くなる傾向が見られる。わたしは祖父母と父母が同居する古風な家で育ったので家族が円満であることが大切だと考えている。お客様にそんな話をすると、ほとんどのお客様が「そうだよねぇ。家族円満が何より大切だよねぇ」と同感されるが、「世知辛い世の中になったので、家族円満にやっていくことが難しいねぇ」と言われるお客様が少なくない。たしかにその通りで、友達や同僚の中には家族を犠牲にしてまで自分のやりたいことをやっている人がいる。わたしは家族を犠牲にして自分がやりたいことをやるなんて考えられない。どうしてそんなことができるのか不思議でならない。以下省略。

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