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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)25

二十四.一陽来復する時

 人や組織の盛衰の循環を季節に当て嵌めると盛運の上限は夏至であり、衰運の下限は冬至である。夏至は盛運の上限であると同時に盛運の流れから衰運の流れに転ずる時で、冬至は衰運の下限であると同時に衰運の流れから青雲の流れに転ずる時である。「二十四.一陽来復する時」は冬至の時に当て嵌まる。冬至の日のある時点まで衰運の(日照時間が短くなる)流れが続き、下限の到達すると一転して盛運の(日照時間が長くなる)流れに変わるのである。盛運の流れに変わっても(日照時間が長くなっても)、直ぐに温かくなるわけではない。まだまだ気候は寒くなる。すなわち盛衰の循環は最初は潜在的な流れとして現れるが、それが顕在化するまでには時間がかかる(日照時間が長くなっても、温かくなるまでには時間がかかる)。以上が「一陽来復する時」である。

 「一陽来復する時」の主人公は、結婚相手に幸せになってもらうことを願って、良き習慣を身に付けるために毎日コツコツと努力を始めた「あなた(わたし)」である。

 わたしは生まれつきの怠け者である。昔から何をやっても長続きしたことがない。頭は悪くないので小中学校の成績は悪くなかったが、高校に入ると授業の内容も高度になり、また大学受験を視野に入れた勉強となるので、毎日コツコツと勉強することが必要になる。だがわたしは何かを毎日コツコツやることができないのだ。何をやっても直ぐに飽きて放り出してしまう。だから途端に成績が悪くなり合格できる見込みの大学がほとんどなくなった。高卒で就職したくなかったから、専門学校に入学したが卒業しても就職先がなくアルバイトを転々とするようになった。今言うフリーターの走りである。フリーター生活は二十代半ばまで続いたが同居していた両親から「いい加減に独り立ちしろ」と言われて、家を出てアパートを借り父親の知り合いが経営している地元の中小企業に中途採用してもらった。
 仕事は嫌いではないので学生時代のようにサボることなく毎日出社して真面目に働いた。社長は優しい人で面倒見が良かった。週末になると仕事の後、若手社員を飲みに連れて行ってくれた。同僚も良い人ばかりで仕事には何の不満もなかった。休みの日はこれといってやることもないので、昼近くまで寝ており、起きたら近所にある牛丼屋に行き、ビールと大好物の牛丼を食べることが休日の日課となった。以下省略。

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