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はじめての易経 38.火澤睽

三十八火澤睽(かたくけい) ☲ ☱ 離上兌下

 互卦 六三水火既濟☵☲
 綜卦 三七風火家人☴☲
 錯卦 三九水山蹇 ☵☶

 人間関係が最も良好な風火家人☴☲がひっくり返ると、人間関係が最もギズギスする火澤睽☲☱の時となる。まるで今の日本社会のようである。高度経済成長から安定成長期にかけて、温かく幸せそうな家庭が多かった。祖父母と両親、子供が一緒に暮らす大家族も健在で、力を合わせて仲良く暮らしている家族が多かったように思う。家族や家庭だけでなく、会社も家族のような人間関係で成り立っており企業家族と呼ばれていた。昭和三十年ころから平成が始まるころまでは、家庭も企業も風火家人の良好な人間関係が成り立っていたように思う。ところが、経済の成長が止まり、家族や企業の在り方など世の中の仕組みがおかしな方向に変わって行くようになると、風火家人の時がひっくり返り火澤睽の時に陥ってしまった。
 卦象で見ると、上卦離☲の火は上に昇り、下卦兌☱の澤の水は下に降る。上の者と下の者が反対を向いて、背き合っている。
 家庭に当て嵌めると、両親と子供たちの考え方が反対を向いて背き合っている。企業に当て嵌めると役員と従業員の考え方や価値観が反対を向いて背き合っている。国家に当て嵌めると政府が進める政策と国民の望む政策が反対を向いて背き合っている。
 楽しそうで温かく幸せそうだった風火家人の時の組織風土とは正反対に辛そうで冷たく不幸せそうな組織風土である。
 家庭も企業も国家も火澤睽の時に陥ると、組織の一体感を失い人間関係が悪化して、多くの人が不幸になる。
 易経では人間関係を「応」と「比」で表している。応は上卦と下卦の同じ位置の爻である。初爻と四爻、二爻と五爻、三爻と上爻の関係が応である。応の関係は深い関係である。深い関係が良好ならば物事はスラスラ進む。深い関係が悪くなると物事は停滞する。火澤睽は上の者と下の者の深い関係が悪化している。
 それぞれがよく話し合ってお互いを理解するようになれば応の関係が良くなる。応の関係が良くなれば組織全体が良くなり、組織風土も改善する。

 以上が火澤睽の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。(太字を読めば理解できる。)以下省略。

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