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易経(周易)を読み解く 四(易経の基礎知識)

□六十四卦の正しい爻(こう)位(い)(正位)と正しくない爻(こう)位(い)(不正)
 奇数の爻(初・三・五)に陽爻が位置しているのと偶数の爻(二・四・上)に陰爻が位置しているのをを正位、奇数の爻(初・三・五)に陰爻が位置しているのと偶数の爻(二・四・上)に陽爻が位置しているのを不正と云う。正位を善し、不正は善くないと考える。

     正  正  正   正  正  正
     ‥  ―  ‥   ―  ‥  ― (六三 水(すい)火(か)既(き)済(せい))
     不正 不正 不正  不正 不正 不正
     ―  ‥  ―   ‥  ―  ‥ (六四 火(か)水(すい)未(び)済(せい))

 全て正位の六十四卦は「水(すい)火(か)既(き)済(せい)」、全て不正の六十四卦は「火(か)水(すい)未(び)済(せい)」である。

□六十四卦における「中」と「不中」の概念
 「中」とは「中(ちゆう)庸(よう)」の略で、「中庸」とは、「その時々に最も適切に対応できる」ことである。上卦と下卦の真ん中に位置している二爻と五爻を「中」と云い、「中庸」の徳を具えていると考える。二爻や五爻よりも上にある上爻と三爻は「過ぎたる」存在で、「やり過ぎる」性質を具えている二爻や五爻よりも下にある四爻と初爻は「及ばない」存在で、「物足りない」性質を具えている。

     過  中 不及   過  中 不及
     ‥  ―  ‥   ―  ‥  ―

□六十四卦における「応」と「比」の概念
 上卦と下卦の同じ位置にある爻が陰陽の関係にある場合、その二つの爻は「応」じている関係にあると考える。「応」じている関係とは、親子、夫婦、恋人など深い関係である。また、上下にある爻が陰陽の関係にある場合、その二つの爻は「比」している関係にあると考える。「比」している関係とは、友達、同級生、同僚など浅い関係である。
 左の場合は、初爻と四爻、二爻と五爻、三爻と上爻の全てが応じており、初爻と二爻、二爻と三爻、三爻と四爻、四爻と五爻、五爻と上爻の全てが比している。

     ‥ ― ‥  ― ‥ ― (六三 水(すい)火(か)既(き)済(せい))

 左の場合は全ての爻が応じても比してもいない。

     ― ― ―  ― ― ― (一 乾(けん)為(い)天(てん))
     ‥ ‥ ‥  ‥ ‥ ‥ (二 坤(こん)為(い)地(ち))

 右の場合でも、「応」ずる、あるいは、「比」する位置にある爻と爻が、志を同じくすれば、応ずる関係や比する関係が成立する場合(乾為天の二爻と五爻や坤為地の二爻と五爻など)がある。
□六十四卦における「卦(か)主(しゆ)」と「成(せい)卦(か)主(しゆ)」
 「卦(か)主(しゆ)」とは、その物語において最終的な意思決定権を有する者である。ほとんどの物語では組織におけるトップの地位にある五爻が「卦(か)主(しゆ)」である。「成(せい)卦(か)主(しゆ)」とは、その物語の主人公である。例えば、右に見た「一 乾為天」の場合は、「卦(か)主(しゆ)」「成(せい)卦(か)主(しゆ)」共に五爻である。「二 坤為地」の場合は、「卦(か)主(しゆ)」は五爻で、「成(せい)卦(か)主(しゆ)」は二爻である。

□本(ほん)卦(か)と互(ご)卦(か)(互(ご)体(たい))
 本卦とは、占(せん)筮(ぜい)して(筮(ぜい)竹(ちく)やコインやカードなどで占って)得た卦や任意に選んで得た卦である。「水(すい)火(か)既(き)済(せい)」を本卦とした場合、「水(すい)火(か)既(き)済(せい)」の上爻と初爻を除き、五爻・四爻・三爻(互体と云う)を上卦、四爻・三爻・二爻(互体と云う)を下卦としたのが互卦「火(か)水(すい)未(び)済(せい)」である。

     本卦 ‥  ―  ‥   ―  ‥  ― 「六三 水(すい)火(か)既(き)済(せい)」
        上爻 五爻 四爻  三爻 二爻 初爻
     互卦 ―  ‥  ―   ‥  ―  ‥ 「六四 火(か)水(すい)未(び)済(せい)」

 本卦の上爻と初爻は、物語の容れ物である。容れ物を除き、容れ物の中身を抽出したのが互卦である。すなわち、「完成した時」を意味する「水(すい)火(か)既(き)済(せい)」の容れ物を除いて中身を抽出したのが、「未完成な時」を意味する「火(か)水(すい)未(び)済(せい)」である。つまり、完成した時(水(すい)火(か)既(き)済(せい))の中身は未完成な時(火(か)水(すい)未(び)済(せい))なのである。

□本卦と之(し)卦(か)
 之(し)卦(か)とは、占筮して得た本卦の爻や任意で選んだ本卦の爻が陰陽反転した卦である。例えば本卦が「水(すい)火(か)既(き)済(せい)」の二爻が陰爻だとすれば、二爻が陽爻に反転すると「水(すい)天(てん)需(じゆ)」となる。すなわち、「完成した時」である「水(すい)火(か)既(き)済(せい)」の二爻が変ずると「慈雨が降ってくるのを待っている時」の「水(すい)天(てん)需(じゆ)」に転ずる(時が変化する)のである。

     本卦 ‥  ―  ‥   ―  ‥  ― 「六三 水(すい)火(か)既(き)済(せい)」
        上爻 五爻 四爻  三爻 二爻 初爻
     之卦 ‥  ―  ‥   ―  ―  ― 「五 水(すい)天(てん)需(じゆ)」
 例えば本卦が「水(すい)火(か)既(き)済(せい)」の五爻(陽爻―)だとすれば、五爻が陰爻‥に反転すると「地(ち)火(か)明(めい)夷(い)」となる。すなわち、「完成した時」である「水(すい)火(か)既(き)済(せい)」の五爻が変ずると「暗黒の時」である「地(ち)火(か)明(めい)夷(い)」に転ずる(時が変化する)のである。

     本卦 ‥  ―  ‥   ―  ‥  ― 「六三 水(すい)火(か)既(き)済(せい)」
        上爻 五爻 四爻  三爻 二爻 初爻
     之卦 ‥  ‥  ‥   ―  ‥  ― 「三六 地(ち)火(か)明(めい)夷(い)」
□本卦と綜(そう)卦(か)
 綜(そう)卦(か)とは、占筮して得た本卦の爻や任意で選んだ本卦をひっくり返した(百八十度回転させた)卦である。自分の立場から見たのが本卦だとすれば、相手の立場から見たのが綜(そう)卦(か)である。また、人間の立場から見たのが本卦だとすれば、天(神仏)の立場から見たのが綜(そう)卦(か)である。

     本卦 ‥  ―  ‥   ―  ‥  ― 「六三 水(すい)火(か)既(き)済(せい)」
        上爻 五爻 四爻  三爻 二爻 初爻
     綜卦 ―  ‥  ―   ‥  ―  ‥ 「六四 火(か)水(すい)未(び)済(せい)」

 自分が「完成した時」に在る(勝った)とすれば、相手は「未完成な時」に在る(負けた)のである。人間が「完成した時」に在る(文明を創った)と思っていても、天(神仏)から見れば「未完成な時」に在る(環境を汚染した)のである。

□本卦と錯卦(さつか)
 本卦の各爻を陰陽反転させた卦が錯卦(さつか)である。本卦と錯卦(さつか)を合わせると陰陽同数(六陽六陰)となる。本卦と錯卦(さつか)で太極となるのである。本卦の裏側には錯卦(さつか)が在り、錯卦(さつか)の裏側には本卦が在る。本卦と錯卦(さつか)を合わせて森羅万象が成立するのである。
 例えば、本卦が「乾(けん)為(い)天(てん)」の場合、錯卦(さつか)は「坤(こん)為(い)地(ち)」となる。

     本卦 ―  ―  ―   ―  ―  ―  「一 乾(けん)為(い)天(てん)」
        上爻 五爻 四爻  三爻 二爻 初爻
     錯卦 ‥  ‥  ‥   ‥  ‥  ‥  「二 坤(こん)為(い)地(ち)」

 本卦の「乾(けん)為(い)天(てん)」は「主役・リーダーの時」である。
 錯卦(さつか)の「坤(こん)為(い)地(ち)」は「命令に順う時」である。「主役・リーダー」は「命令に順う人」がいるから成立し、「命令に順う人」は「主役・リーダー」がいるから成立する。本卦と錯卦(さつか)は相互補完関係にあるのだ。

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