【巽(☴)】
巽は「風」である。風は下から入り込んできて流通する。流通すれば様々な取引が始まる。取引からは利益が生ずるが、迷いも生ずる。風が素直に流通すれば柔順である。それを巽順と云う。けれども素直に進まず紆余曲折すれば迷いに迷って迷走する。
風は流通することから、命令を伝達するという意味が生じる。人が移動する、人を教え導くという意味にも発展する。
易占の神様・高島嘉右衛門は、「高島周易講釈(八幡書店)」に次のように書いている(現代語に意訳した)。
「巽は風である。風は物に従い、万物を鼓舞して生育する。それが巽の性質、造化の作用である。一陰が二陽の下に在る。陽は強く、陰は弱い。一陰が二陽に降って入り込む形である。人に当て嵌めれば気概が乏しく、恭(うやうや)しくして人に取り入ろうとする形である。」
そして、巽が具えている意味や性質を次のように整理している。(一部、著者が理解できない概念は省略した)
「風、敬服、伏入、進退不果、如(じよ)才(さい)(手抜かり)なし、長女、股、東南方面、春と夏の間、酸味、白色、肝臓、辰巳、反目、魚、命令、臭い、依頼、風俗、教え、妾、係、委託、恋、恒なし、疾(はや)い、会合、広告、通じる、隨従(したがう)」
「(初爻)瓜、勝たない、従う、幇(ほう)間(かん)(太鼓持ち)、媚びる」
「(二爻)馴れ合い、風采、風評、風致(風趣)、布告、周旋、優美、流行、投機、都合、工夫、薫陶、景気、経済、風流、接待、融通、周し、修好(国と国が親しく交際する)、推考」
「(三爻)騒動、軽薄、彷徨、漠然、狼狽」
【坎(☵)】
坎は「水」である。水は命の泉である。だから孚である。君子たる陽爻の孚が小人たる陰爻の険阻艱難に囲まれて身動きできないのである。険阻艱難は水の中に陥って出てこられない状態である。そのままずっと出てこられないと死んでしまう。険難である。艱難である。陽爻(|)の孚が陰爻(:)の困難が封じ込められて苦しんでいるのである。
易占の神様・高島嘉右衛門は、「高島周易講釈(八幡書店)」に次のように書いている(現代語に意訳した)。
「坎は水である。水は万物を潤すものである。それが坎の造化の作用である。坎の字は土が欠けている。土が欠ければ水は低い所に陥る。一陽が二陰の間に陥る形である。人に当て嵌めれば、困難に陥って悩んでいる形である。」
そして、坎が具えている意味や性質を次のように整理している。(一部、著者が理解できない概念は省略した)
「水、陥る、隠れる、月、通る、中男、耳、北方、冬、鹹(かん)味(み)(塩辛い味)、黒色、腎臓、先生、邪魔、狐、狡猾、穴、血、寒い、不明、窮(きゆう)迫(はく)(困窮)、盲人、険しい、不景気」
「(初爻)憂う、苦労、怨む、暗愚、哀しい、寂しい、貧窮、厭(いや)なこと、不快、機密、怠け者」
「(二爻)思慮、酒食、法律、習う、教える、辛抱する、大川、情、注意、慷(こう)慨(がい)(不義を憤り嘆く)」
「(三爻)盗賊、寇(あだ)、悪、神経病、刑、眚(わざわい)、疾(やまい)、羞恥、害悪、敗れる、咎められる、醜い、冤罪、呆(あき)れる、痛い、薄命、万苦、破廉恥、滅亡、流離、汚名、横着、倒産、潰れる、嫉妬、無頼漢、詐欺、悶える、無情、危急」
【艮(☶)】
艮は「山」である。山はどっしりとして微動だにしない。それゆえ艮には「止まる」という性質がある。艮の山は高く聳え立っているので、艮を高層ビルや鳥居に見立てることもある。また、高い、崇めるという意味にもなる。
易占の神様・高島嘉右衛門は、「高島周易講釈(八幡書店)」に次のように書いている(現代語に意訳した)。
「艮は山である。止まって動かないのは山の性質である。山は地下の火力によって大地が突出して高く地上に聳え立ち、どっしりとして動かない。艮は一陽が二陰の上に在る。これ以上上に進むことはできないから、どっしろと止まっている。人に当て嵌めると、己の見識を確立して微動だにしない形である。」
そして、艮が具えている意味や性質を次のように整理している。(一部、著者が理解できない概念は省略した)
「山、止まる、篤實、少男、手、東北方面、冬と春の間、甘味、黄色、怠け者、宮城、犬、始終、敬する、石、高く大きな山」
「(初爻)童(どう)僕(ぼく)(召使いの少年)、閑(ひま)、従者、僅か、陳腐、貯え、偏屈、隔意(打ち解けない気持)、止められる」
「(二爻)守る、小心、謙遜、操られる、保守、維持、約束、静か、無事、止められる、質(しつ)朴(ぼく)(純真・素直)、次(つぎ)」
「(三爻)止められる、頑固、背、家、取る、防御、世情に通じない、疎外、蓄え、手心、採用、掌握、傲り高ぶる、我意、高尚、厳格、楼閣、権限、根性、孤立、荘厳、謝絶、渋滞」
【坤(☷)】
坤は「地(大地)」である。大地は上に何でも載せるから柔順である。柔順だからあらゆる物事を受け容れる。あらゆる物事を受け容れるから雌馬のように主人に順う。坤☷は乾☰と正反対の性質を具えている。乾は主体的、能動的、積極的だが、坤は従属的、受動的、消極的である。
易占の神様・高島嘉右衛門は、「高島周易講釈(八幡書店)」に次のように書いている(現代語に意訳した)。
「坤は地である。天のエネルギー(氣)を受け容れて万物を生成化育することが坤の造化の作用である。」
そして、坤が具えている意味や性質を次のように整理している。(一部、著者が理解できない概念は省略した)
「地、地球、至る、生きる、厚い、載せる、含む、雌馬、迷う、常、柔らかい、庶民、臣下、妻、母、凡庸、小人、腹、西南、甘味、胃腸、夏と秋の間、大衆、平凡、吝(りん)嗇(しよく)、惜しむ、車、文章、平均、貯蓄、暗愚、収(しゆう)斂(れん)(収縮)、蔵(かく)す、鞄、受(承)ける、使役する、服從、共同、省略、労働、乱雑、厚顔、易簡、図、器、能力、法、変化、黄色」
「(初爻)卑賤、奴隷、不善、馴れる、邪」
「(二爻)抱く、慈善、方正」
「(三爻)疑う、成すこと无し」