四十七 澤水困 ☱ ☵
澤水困☱☵は二九坎為水☵☵に次いで困難な時(衰運)で四大難卦の一つでもある。四大難卦(あと二つは三水雷屯☵☳と三九水山蹇☵☶)に限らず六十四卦の中には困難な時がいくつもある。
四大難卦以外でわたしが困難(衰運)だと感じている卦を挙げると次のようになる。
「十二天地否☰☷、二三山地剝☶☷、二五天雷无妄☰☳、三三天山遯☰☶、三六地火明夷☷☲、三八火澤睽☲☱、四四天風姤☰☴、五五雷火豊☳☲、六二雷山小過☳☶」。以上に四大難卦を加えると十三の物語(六四分の十三=二十%)となる。
盛運の物語も十三だったから、衰運の物語と同じである。数の上で盛運と衰運はバランスがとれていることになる。
卦象で見ると上卦兌☱の澤の水が澤から溢れ出て(下卦坎☵の水が澤から溢れ出た水を表す)、乾涸(ひか)らびてしまった状態である。下卦坎☵は澤水困の時に入ると、いきなり困難な状況に置かれることを示している。四大難卦の中で澤水困より困難度が低い水山蹇は下卦艮☶の山が行く道を阻んでいるが、立ち止まって困難を乗り越える方法を考えることができる。だが、澤水困の時はいきなり困難の真っ只中に置かれるので立ち止まって考えている余裕がない。困難に対処しながら、困難を乗り越える方法を考えるという厳しい状況に陥いるのである。経文の大象伝に「君子以て命(めい)を致し志を遂(と)げる/この大困難を乗り越えるためには、君子たる者、命を懸ける覚悟で、この事態を乗り越えることが自らの天命だと心得て、大困難を乗り越える確乎不抜の志を打ち立てることが求められる」とある。命懸けで取り組んで行けば必ず乗り越えることができる困難である。坎為水の困難は命懸けで取り組んでも乗り越えられない可能性もある。しかし、澤水困の困難は必ず乗り越えられる困難である。だから、苦しくとも辛くとも命懸けで耐え忍ぶのである。
この困難を乗り越える方法を、経文ではなく卦象で見ると、下卦坎☵の大困難に対処しながら、乗り越える方法を考えるために互体二三四の離☲の明智・明德を用いる。また、下卦坎☵には「至誠(至上の真心)」の性質もある。下卦坎☵の「至誠」と互体離☲の「明智・明德」で、困難を乗り越える方法を考えるのである。
困難を乗り越える方法を思い描いたら、互体三四五の巽☴の伝達力で組織中に命令を広め、組織の人々を教化して、困難を乗り越えるのである。困難を乗り越えれば、上卦兌☱の悦びの時を迎えることができる。